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60年代の輪郭 『夕陽のガンマン』のテーマ〈For a Few Dollars More〉カヴァー・ヴァージョン

2009-07-06

曲名
夕陽のガンマン(For a Few Dollars More)
アーティスト
ヒューゴー・モンテネグロ&ヒズ・オーケストラ(Hugo Montenegro & His Orchestra)
収録アルバム
The Good, the Bad and the Ugly
作曲者
エンニオ・モリコーネ(Ennio Morricone)
リリース年
1967年


☆苦いパートナーシップ☆

エンニオ・モリコーネは年をとってから、西部劇のテーマ曲についてあれこれいわれるのを嫌がるようになったそうです。西部劇のスコアは自分の仕事のわずか8パーセントにすぎない、などということをいうそうですが、ある映画のスコアの重要性と、スコアを書いた映画の本数のあいだにはなんの関連性もないのはいうまでもありません。定量的問題と定性的問題を同じ平面で比較するわけにいきません。

Ennio Morricone - conducting on stage
エンニオ・モリコーネ

理屈はさておき、ものをつくる人にとっては、ずっと昔、若かりしころにつくったものについて、いつまでもあれこれ取り沙汰されるのは、あまり気持のよくないことかもしれません。だいじなのはいまつくっている作品だけ、過去の作品はどうでもいい、というタイプの人もいます。

ただ、モリコーネの場合、ささやかな引っかかりも感じます。ブルーノ・ニコライという人の存在です。この人はモリコーネが西部劇の音楽で有名になったときに、彼の右腕として活躍していたそうで、オーケストレーションの面でもモリコーネをおおいに補佐していたと考えられています。

分業がいけないというのではありません。二人が組んでいた時期にすばらしいスコアやテーマ曲がたくさん生まれているのだから、悪いことのはずがありません。問題は、モリコーネとニコライがやがて感情的に対立し、険悪な関係になってしまったことです。結局、分業というのは、クリエイティヴィティーの面でも、経済の面でも、そして名誉の意識の面でも、つねにむずかしさを抱えているということなのかもしれません。いちどは理想的に見えたパートナーシップも、大成功のために足元に穴が開くというのは、どんな分野でもよく見られることです。

功成り名を遂げた大作曲家としては、ニコライの分担部分がたくさん含まれる60年代の作品について、細かいことを穿鑿されるのはうんざりなのかもしれません。まして、どこからどこまでがモリコーネの仕事で、どこからニコライがやったのだ、などといわれていることが耳に入れば、心穏やかではいられないでしょう。ニコライと組んでいた時期のものばかりが賞賛されるということは、つまり、ニコライが賞賛されているのだ、という極端な受け取り方もできるわけですから。

bruno nicolai
ブルーノ・ニコライ

あくまでも感触なのですが、作曲をするのは主としてモリコーネ、そこから各パートの譜面を起こすのは主としてニコライ、という分担ではなかったのでしょうか。わたしは、モリコーネのウェスタン・テーマは、楽曲としても面白いし、アレンジ、サウンドとしても楽しいと思うので、仮にこの想定があたっていたとしても、二人とも立派な仕事をしたと思います。

まあ、こんな遠い外国で、素人がなにをいったところ、御大には関係ないことですが、モリコーネにあたえた王冠をはぎとって、ニコライに渡そうということではなく、モリコーネだけが有名になり、影でその音楽を支えたニコライのことが知られていないのはアンフェアではないかということです。「たった8パーセントにすぎない」というのなら、じゃあ、その半分ぐらいはニコライに分け与えたって罰はあたらないと思うのですが、いかがでしょうかね、マエストロ?

☆ヒューゴー・モンテネグロの夕陽のガンマン☆

さて、今日はモリコーネのヴァージョンではなく、イタリア製西部劇が本家アメリカに逆輸入された結果、音楽のほうでも同様の現象が起きたというお話です。『夕陽のガンマン』についても、『荒野の用心棒』でも二度にわたって登場したヒューゴー・モンテネグロのカヴァー盤があります。なにしろ、マカロニ・ウェスタンの音楽だけでアルバム一枚つくってしまった人なので、有名曲はみなやっているのです。

結論からいうと、TitoliやTheme from "A Fistful of Dollars"より、このFor a Few Dollars Moreのほうが、ずっと出来がよく、サウンドトラック盤とはちがった楽しみのあるヴァージョンになっています。オーケストラ・リーダーを褒めるときは、アレンジやサウンドを褒めるべきなのですが、モンテネグロの〈夕陽のガンマン〉のアレンジは平均点以上ではあるものの、ものすごくいいというわけではありません。

hugo montenegro

ヒューゴー・モンテネグロの〈夕陽のガンマン〉の魅力は、〈さすらいの口笛〉に困惑して、〈アパッチ〉のリズム・パターンを援用したドラムのハル・ブレインが、この曲ではいかにも彼らしい、華やかなビートを叩きまくっていることに尽きます。

ヒューゴー・モンテネグロ・オーケストラの魅力というのは、過去および同時代のハリウッドの他のポップ・オーケストラにくらべ、ジャズ色が稀薄で、ポップ/ロック寄りのサウンドになっていることです。それを実現しているのは、ドラムのハル・ブレイン、ベースのキャロル・ケイをはじめとする、60年代ハリウッドのポップ/ロック系セッションを支えたエース・プレイヤーたちです。

そういう、相対的に強いビートをもったメンバーでラウンジ・ミュージックを録音するとなると、結果は吉凶どちらとも予測はつかず、うまくいけばヒット、うまくいかないと、やはり、このメンバーをもってしても、しっくりしないサウンドになってしまいます。〈夕陽のガンマン〉は、ハル・ブレインのスタイル、プレイがピタリとはまって、おおいに楽しめます。

インストゥルメンタルの常道ですが、モンテネグロの〈夕陽のガンマン〉は、変化をつけるために、後半で半音転調を使っています。いたって当たり前のやり方ですが、これもまたきちんと効果を上げています。うまくいくときは、すべてがうまくいくのでしょう。

毎度、同じアルバムばかり出すのも退屈なので、本日は〈夕陽のガンマン〉を収録したベスト盤をあげておきます。

The Best of Hugo Montenegro
The Best of Hugo Montenegro
01. Come Spy With Me
02. Secret Agent Man
03. Theme From 'I Spy'
04. Thunderball
05. Theme From 'The Man From U.N.C.L.E.'
06. The Silencers
07. The James Bond Theme
08. 'Get Smart' Theme
09. Theme From 'The F.B.I.'
10. The Man From Thrush
11. Theme From 'The Spy Who Came In From The Cold'
12. Goldfinger
13. Our Man Flint
14. Illya
15. The Good, The Bad & The Ugly
16. Hang 'Em High
17. For A Few Dollars More
18. Theme From 'A Fistful Of Dollars'
19. Theme For Three
20. The Godfather Waltz

☆ビリー・ストレンジの夕陽のガンマン☆

ギタリスト、ソング・ライター、アレンジャー(〈にくい貴方〉つまりThese Boots Are Made for Walkin'をはじめとする、ナンシー・シナトラとの仕事がよく知られている)、プロデューサーのビリー・ストレンジは、あの時代のドラマーのナンバー1はハル・ブレイン、ベースのナンバー1はキャロル・ケイと断言しています。

当然、ヒューゴー・モンテネグロのアルバムと同じように、ビリー・ストレンジの1960年代のアルバムのほとんどで、ドラムとベースはこの二人がプレイしています。では、ヒューゴー・モンテネグロ盤とそっくりかというと、そんなことはありません。基本的なノリは同じですが、アレンジ、解釈が異なるので、それに応じて味わいも変化しています。ビリー・ストレンジとヒューゴー・モンテネグロは、タイプの異なるアレンジャーなのだということでしょう。

ビリー・ストレンジは基本的にはギター・プレイヤーなので(ときにアレンジャーとしての側面を前に出し、ギター・プレイは控えめにすることもあるが)、アルバムThe Great Western Themes収録の〈夕陽のガンマン〉は、モンテネグロのヴァージョンよりも、ギターが活躍するアレンジになっています。ただし、ビリー・ストレンジはストイックなプレイヤーなので、ていねいにメロディーを弾くことに徹し、テクニックをひけらかすことはしていません。

時期も近く、メンバーも似通っている、ヒューゴー・モンテネグロとビリー・ストレンジの〈夕陽のガンマン〉、どちらがいいと判断するのは苦しいところですが、ギターが好きならビリー・ストレンジ、ドラムが好きならヒューゴー・モンテネグロというところではないでしょうか。わたしは両方好きなので、両方もっていますが!

Billy Strange: His Guitar & Orchestra "Great Western Themes"
Billy Strange  great western themes
01. High Chaparral
02. Hign Noon
03. Magnificernt Seven
04. The Good, The Bad And The Ugly
05. Bonanza
06. Cowboy And Indians
07. Gunsmoke
08. For A Few Dollars More
09. Paladin
10. Hang 'em High
11. Five Card Stud
12. Showdown At La Mesa

☆50ギターズ、アル・カイオラ☆

マカロニ・ウェスタン全体をセットで考えているわけではないのでしょうが、なにか1曲カヴァーすると、それだけでは終わらず、いくつかカヴァーする傾向というのははっきりとあって、〈夕陽のガンマン〉も〈荒野の用心棒〉と似たようなアーティストが並んでいます。

50ギターズも、〈さすらいの口笛〉が収録されたEl Hombreというアルバムで、他のマカロニ・ウェスタンの曲もカヴァーしていて、当然ながら、〈夕陽のガンマン〉もやっています。しかし、ここが微妙なところなのですが、〈さすらいの口笛〉ではアレンジがそこそこうまくいっていたのに、〈夕陽のガンマン〉はあまりピッタリといっているようには感じません。El HobreはCD化されていませんが、〈さすらいの口笛〉同様、〈夕陽のガンマン〉も、Ultimate Western Collectionという編集盤で聴くことができます。

The 50 Guitars of Tommy Garrett "Ultimate Western Collection"
50 Guitars Western Collection

01. Good, The Bad & The Ugly
02. South of the Border
03. Theme from the Magnificent Seven
04. Mexicali Rose
05. Theme from the Hanging Tree
06. Yellow Rose of Texas
07. Domingo de Ronda [From Blue]
08. Theme from a Fistful of Dollars
09. On the Old Spanish Trail
10. Comancheros
11. Green Leaves of Summer
12. Theme from Viva Zapata
13. Conquest (Captain from Castile)
14. Theme from Giant
15. Theme from for a Few Dollars More

アル・カイオラはビリー・ストレンジと同系統の、インプロヴはほとんどしない、きわめてストイックなタイプのギタリストですが、ストレンジがハリウッド録音であったのに対し、カイオラの多くのトラックはニューヨークで録音されています。〈夕陽のガンマン〉を収録したNon-Stop Western Themesというアルバム(「『荒野の用心棒』挿入曲〈さすらいの口笛〉(Titoli)カヴァー盤」で紹介したように、A面とB面でアーティストが異なる変則的なLP)もそうでしょう。残念ながら、わたしには違和感のあるアレンジ、サウンドで、うまくいっているようには思えません。右チャンネルに配されたハープシコードやマリンバが、なんだか冗談のように響きます。

Non-Stop Western Themes (Sunset Records SLS 50312)
Non-Stop Western Themes

Side A (played by the Leroy Holmes and his Orchestra)
01. The Good, The Bad and the Ugly
02. A Professional Gun
03. True Grit
04. A Fistful Of Dollars
05. Ole Turkey Buzzard
06. Hang 'Em High
07. The Big Gundown

Side B (played by Al Caiola)
08. The Magnificent Seven
09. For A Few Dollars More
10. Bonanza
11. The Big Country
12. Wagons Ho!
13. Return Of The Seven
14. High Chaparral

結論として、〈夕陽のガンマン〉のカヴァーは、ヒューゴー・モンテネグロとビリー・ストレンジの2種が好ましい出来だと思います。
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テーマ : 60年代の輪郭
ジャンル : 映画

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