FC2ブログ

エリー・グリニッチ追悼 その15 ロネッツ“アイ・ワンダー”(I Wonder by the Ronettes)

2009-10-25

曲名
アイ・ワンダー”(I Wonder)
アーティスト
ロネッツ(The Ronettes)
収録アルバム
『ファビュラス・ロネッツ』(Presenting the Fabulous Ronettes featuring Veronica)
作曲者
ジェフ・バリー、エリー・グリニッチ、フィル・スペクター(Jeff Barry, Ellie Greenich, Phil Spector)
リリース年
1964年


取りかかったときは10曲ぐらいを予定していましたが、やってみれば、あれもある、これもあるで、とうとう15曲になりました。まだあと何曲かあるので、結局、20曲までいってしまうかもしれません。そろそろパターン化して、倦みつつあるのですが。

前回のOne Boy Too Lateも、二種類のヴァージョンがともにいい出来でしたが、今日のI Wonderも、3種類とも楽しめます。

☆ ロネッツ ☆


ロネッツ盤がやはり図抜けて強力です。なんたって、ハル・ブレインが大車輪ですからね。いまのわたしは年をとったので、晩年のバディー・リッチのブラシ・ワークに惚れ惚れしたりしますが、ロックンロールはやっぱりパワー・ドラミングです。力みなぎるハル・ブレインのプレイはすばらしいの一言。



サンダーラスなスネアの力強さもすごいものですが、このミキシングでちゃんとキックが聞こえるところに、ハル・ブレインの体技のレベルがあらわれています。ふつうのキックのパターン(1&3またはそのヴァリエーション)ではないので、キック・ペダルをめいっぱい踏み込んでいるのがはっきりと意識されます。相手が人間なら三発も喰らわせれば内臓破裂で死ぬくらいの強烈なキックです。そして、全編それで押し通すところが、まさにハル・ブレインのハル・ブレインたる所以。

最初の見せ場は八小節目、すなわちイントロの最後の小節からヴァースへの移行におけるフィルインです。これもみごとですが、それ以上にすごいのはブリッジから間奏への接続部のフィルインで、ハルが叩いたあらゆるフィルインのなかでも五本指に入ります。いや、テクニックの問題というより、ドラマティズムの側面からみごとだと云っているのです。これだけの大見得を切れる千両役者は、アメリカ大衆音楽史全体を見わたしても、ほんの一握りしかいません。

ronettes 45 is this what i get for loving you

エンディングに入る直前と、そのちょっとあとの大胆な4分の連打もたいしたものです。すぐれたアイディアと、それを十全に実現する圧倒的な腕力と脚力(早い話が「ド派手にぶちかます」ということだが!)の勝利。対角線投法だなんてクリシェには頼らず、ノーアウト二三塁で主軸を迎えて、全部ストレート、それもすべてインハイという意表をつく攻めで三球三振というところです。

クリシェは悪だとはいいませんが、世の中のあらゆることと同じように、音楽もまた、クリシェと意想外なものとが両輪になっているのであって、クリシェの強い抑え込みと、それを突き破ろうとする意思が拮抗してこそ、すぐれた作物が生まれるのです。ドラミングとはクリシェとの親和と戦いの拮抗そのものといえます。

これだけハル・ブレインが爆走すると、あとはどうでもいいようなものですが、こういうサウンドをイメージしたフィル・スペクターもすごいものですし、その実現に協力したラリー・レヴィンとジャック・ニーチーも、いつものように立派な仕事をしています。ホーン・セクションの扱いがすごく繊細でみごとなのですが、これもスペクター=ニーチー=レヴィンの三位一体の技と受け取るべきなのでしょう。

bomb the twist
おっと、これはロネッツではなかった!

☆ クリスタルズ ☆


同じくフィレーズのクリスタルズ盤も、ロネッツ盤のようなすごみはないものの、まずまず楽しめる音になっています。

クリスタルズ


なんだかUptownなどの初期のトラックを思い起こさせるギター・イントロなので、クリスタルズのベスト盤を確認したら、やはりNYのミラ・サウンドでの録音とありました。

バックビートは叩かず、装飾音に終始するドラムの扱いを含め、アレンジはクリスタルズのRudolph The Red-Nosed Reindeer(ハリウッド録音)そのままです。フィル・スペクターのクリスマス・アルバムは、Be My BabyのアレンジでFrosty the Snowmanをやっていたりするので、こちらもI Wonderが先なのかと思いましたが、録音は63年11月なのでI Wonderのほうがあとの録音、つまり、ハリウッドのサウンドをNYでコピーしたことになります。

となると、ロネッツとどちらが先なのかと気になって、ベスト盤のデータを見ましたが、こちらも63年11月の録音、ただし、場所はもちろんハリウッドのゴールド・スター、エンジニアはラリー・レヴィン、アレンジャーはジャック・ニーチーとクレジットされています。

the best of the crystals

はて? 例によってクリスタルズがLAに飛ぶのを嫌がっただけなのか、なにか思うところがあったのか、家庭の事情でNYに滞在する必要があったのか(自業自得とはいえ、スペクターを長く悩ませた古女房の問題ですな)、はたまた、音楽的な理由で、同じ曲を両方で作ってみたのか。

ジェフ・バリーとエリー・グリニッチがニューヨークにいたというだけの根拠にすぎませんが、NYでスペクターを交えて曲を書き上げ、そのままクリスタルズで録音し、とりわけいい出来でもなかったので、ハリウッドに戻ってから、またロネッツでやってみた、というような順番かもしれません。

でも、結局、どちらのヴァージョンもアメリカではシングルにされなかったのだから、愕きます(クリスタルズ盤はイギリスでヒットしたらしい)。クリスタルズはお蔵入りでもいいと思いますが、ロネッツはほぼ完璧な出来です。

Walking in the Rainだなんて重苦しい陰鬱な曲をリリースしたのも理解できませんが、I Wonderにように明るく華やかなサウンドの盤をリリースしなかったのも同じように理解不能です。ここらにスペクターの固着があるような気がします。だれか音楽がわかる精神科医(ドクター・キャプラン?)が分析しないものでしょうか。

危うく書き忘れそうになったことを一点。間奏のストリングスのラインはチャーミングです。アレンジャーはアーノルド・ゴーランド。

☆ バタフライズ ☆


バリー=グリニッチとしては、スペクターがI Wonderをシングルとしてリリースすれば満足だったのでしょうが、どういうわけか、クリスタルズ盤もロネッツ盤もリリースされなかったわけで、そこでべつの道をということになったのかもしれません。

バタフライズ


スペクターの大きなつくりにくらべれば、家内工業のようなサウンドで、デモかと思っちゃいますが、これはこれで楽しく聴けます。なんだかララ・ブルックスみたいな声で、ひょっとしてクリスタルズのバイトかよ、とあらぬ疑いをかけてしまいました!

わたしはララ・ブルックスの声が好きなのですが、はじめて聴いたときから、バタフライズを贔屓にしてきたのは、そのせいかもしれません。

レッド・バード・ストーリー

Red Bird Story
Red Bird Story
posted with amazlet at 09.10.25
Various Artists
Snapper/Charly (2007-07-31)
売り上げランキング: 177555

ロネッツもクリスタルズも、いまはベスト盤が市場から消え、プレミアがついているので、アマゾン・リンクはオミットした。ただ音を聴きたいだけなら、遠からず新しいベスト盤がリリースされるだろう。近年のベスト盤、それもLPならともなく、CDのような消耗品にとんでもない金を払うことはない。たんなる端境期にすぎないのだから、しばらく待てばふつうの値段で買えるようになる。
スポンサーサイト



テーマ : 60年代の輪郭(音楽)
ジャンル : 音楽

トラックバック

コメントの投稿

非公開コメント

最新記事
プロフィール

songsformovies

Author:songsformovies
黄金光音堂へようこそ!

counter
RSSリンクの表示
カレンダー
12 | 2020/01 | 02
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
カテゴリ
検索フォーム
最新コメント
月別アーカイブ
最新トラックバック
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
リンク