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エリー・グリニッチ追悼 その14 ボビー・ヴィー“ワン・ボーイ・トゥー・レイト”(One Boy Too Late by Bobby Vee)

2009-10-21

曲名
ワン・ボーイ・トゥー・レイト(One Boy Too Late)
アーティスト
ボビー・ヴィー(Bobby Vee)
収録アルバム
ディ・エッセンシャル&コレクタブル・ボビー・ヴィー(The Essential & Collectable Bobby Vee)
作曲者
エリー・グリニッチ、トニー・パワーズ(Ellie Greenich, Tony Powers)
リリース年
録音は1962ないしは63年、リリースは98年


むやみにカヴァーの多い大物がまだ残っているのですが、数のわりにはいいものが見あたらず、ちょっと脇に逃げることにしました。少数精鋭というか、リック・ネルソンとボビー・ヴィーだけだから、悪い音になるはずがないってくらいです。

tony powersチャート・ブックを見ると、One Boy Too Lateは、マイク・クリフォードのヴァージョンしかチャートインしていません。しかし、これはもっていないし、聴いたこともないので、取り上げません。

エリー・グリニッチの曲にしてはめずらしく、One Boy Too Lateは予定調和的な路線からすこしはずれるコード進行になっています。といっても、ヴァースの冒頭が、D-F#(リック・ネルソン盤のキー)となっているところで、おや、エリー・グリニッチらしからぬところにいくな、と思うだけですが。

バリー=グリニッチ・コンビの場合、DからF#にいくなら、マイナーにするところですが、この曲はメイジャーなのです。共作者のトニー・パワーズが書いた部分でしょうか……。

今日の曲はYouTubeにサンプルがないので、Songs for 4 Seasonsブログのほうに、サンプルを置いておきました。試聴したい方はあちらのブログへどうぞ。


☆ リック・ネルソン ☆


前回のI Can Hear Musicは、はっきりいって、ひとつもいいものがありませんでしたが、今回はたった2種類なのに、どちらもおおいに好みで、看板をどうするか、長考してしまいました。出来は伯仲、どちらを買うか、ではなく、文句なしに両方とも買いです。

なぜかといえば、ともにハリウッドの黄金時代に録音されているので、だれが歌おうと、そういうことには関係なく、すぐれたトラックができあがってしまうのです。

プレイヤーばかりでなく、スタジオやエンジニアをはじめとするインフラストラクチャーも整い、ちょうどこの曲が録音されたころ、先行するニューヨークやナッシュヴィルを追い抜いて、ハリウッドはアメリカ一の、ということは、世界一の音楽都市になりました。そういう輝かしい時代のムードが音にも反映されているのです。

capitol tower
ハリウッド&ヴァインのキャピトル・タワー。リックはマスター・レコーダーやユナイティッド・ウェスタンを使ったので、キャピトルのスタジオは関係ないが、ハリウッド音楽界を象徴するアイコンとして提示した。ちなみに、後述のボビー・ヴィーのプロデューサー、スナッフ・ギャレットもユナイティッドウェスタンばかり使った。

リック・ネルソンは1950年代終わりから、ツアー・バンドと録音するようになりました。そんなことは、あの時代にはまず考えられないことで、どれほどいいメンバーがそろっていたかがわかりますし、また、それだけのバンドを維持できる、つまり、高い給料を払えるほど、リックが売れていたことになります。

その証拠に63年ごろ、リックはパーマネント・バンドの維持をやめてしまいます。大売れした時代は終わり、コストのことを考えなければならなくなったからです。

そして、拘束が解け、給料がなくなった(後者のほうが重要!)結果、ジェイムズ・バートンとジョー・オズボーンという、リック・ネルソン・バンドの二人が、ハリウッドのスタジオで、フリーランスのプレイヤーとして大活躍するようになります。ジョー・オズボーンは、たとえばジョニー・リヴァーズに肩入れし、そのソリッドなグルーヴで、ジョニー・リヴァーズのゴー・ゴー・スタイルに土台と裏づけをあたえることになります。

rick nelson and james burton

人の世はかくのごとく、玉突き、ところてん、めぐる因果の小車よ、なのでして、なにがいいやら、わるいやら、神ならぬ身にして、とんとわかりません。人間万事塞翁が馬、人の運命はあざなえる縄のごとし、あとからふりかえると、じつに面白いものですなあ。

えーと、One Boy Too Lateの話です。ジェイムズ・バートンとジョー・オズボーン、なんて当たり前のように書いてしまいましたが、この曲は彼らではないと感じます。

この曲は、デッカ移籍後のファースト・アルバム、For Your Sweet Loveに収録されたもので、なにか会社の意向があって、それまでとは異なったメンバーで録音された可能性があります。いえ、だからといって、下手だというわけではありません。

rick nelson for your sweet love

イントロと間奏はギターですが、派手なことは一切しなくても、音の出を聴いただけで、うまいなあ、と感じます。まあ、この時代のハリウッドのスタジオで、下手なリードギターを見かけることなど、ごく稀だったでしょうけれど!

リック・ネルソンの録音でリードをとったことがわかっているプレイヤーは、バーニー・ケッセル、ジョー・メイフィス、ハワード・ロバーツ(大物ばかり!)、そして、ツアー・バンドのジェイムズ・バートンですが、この曲のリードは、以上のいずれでもないと思います。

joe osborn
ジョー・オズボーンとフェンダー・プレシジョン

たいした根拠もなく、当てずっぽうで名前をあげるなら、ビリー・ストレンジ。いや、そう空想して楽しんでいるだけなので、ほうっておいてください。ちょっと歪ませたサウンドにおおいに惹かれます。

フェンダー・ベースもブンブンいっていないので、ジョー・オズボーンの雰囲気はありません。そもそも、あまりにもオフで、フェンダーなのか、スタンダップなのかも判断がむずかしいのですが、たぶんフェンダーでしょう。

ドラムはタイムが精確で、スネア・ワークにキレがあり、これがリッチー・フロストなのだろうか、と感じます。当てずっぽうをいうと、初期のリックの録音でストゥールに坐ったアール・パーマーではないでしょうか。なかなかきれいなスネアです。

なんていって、近ごろは推測を外してばかりいるので、これも全部はずれ、いつものように、ジェイムズ・バートン、ジョー・オズボーン、リッチー・フロスト、グレン・D・ハーディン(またはジーン・ガーフ)といったツアー・バンドないしはレギュラー・スタジオ・メンバーかもしれません!

リックのヴォーカルはいつものようにダブル・トラックで、深めにリヴァーブがかけてあります。ただし、この曲では、オフ・マイクでだれかもうひとり歌っています。リヴァーブをかけていないドライなリックかもしれません。いろいろやってみたのでしょう。

united western - studio one
ユナイティッド・ウェスタン・レコーダーのスタジオ1。サンセット6000番地にあった。

アルバム・トラックなのに、総じてじつに楽しい音に仕上がっています。デッカの一枚目で、リックも会社も力が入ったのでしょう。でも、デッカ移籍以後、リックのキャリアは右肩下がりとなるわけで、人生、ままなりません。

わたしは、サウンドとしては、63年こそリック・ネルソンとそのバンドのピークだったと確信しています。この曲は、いつものバンドによる録音ではありませんが、それにもかかわらず非常にいいサウンドで、ハリウッドというインフラストラクチャーの力が端的にあらわれています。



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デッカ時代のボックス・セット
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☆ ボビー・ヴィー ☆


ボビー・ヴィーのOne Boy Too Lateは、録音当時はリリースされず、1998年の編集盤、The Essential & Collectable Bobby Veeに収録されて陽の目を見ました。

圧縮してHDDに置いたものを聴いているので、ファイルではなにもわからないため、ボツだとは今日調べるまで気づいていませんでした。ボツとはまた惜しい! B面に入れておけば、フリップするDJもいただろうと思わせる出来です。

earl palmer, snuff garrett and ernie freeman at the united western recorder
ボビー・ヴィーを支えたスタッフ。左からアーニー・フリーマン(アレンジ、ピアノ、コンダクト)、スナッフ・ギャレット(プロデュース)、そしてアール・パーマー(ドラムズ)。ユナイティッドウェスタン・レコーダーにて。

なにもクレジットがないのですが、録音時期と間奏の構造から考えて、アレンジャーはボビー・ヴィーの他の多くの曲と同じように、アーニー・フリーマンだと推定できます。どういう間奏かというと、ギターとストリングスに同じフレーズを弾かせるのです。

アーニー・フリーマンはこの手を何度か使っています。ギターのみならず、ピアノとストリングスを重ねたものもあります。これがなかなか魅力的なサウンドで、商品としての音楽の価値を決定するのは、つまるところ、どの音とどの音を組み合わせ、それをどのように重ねるかという問題なのだと感じさせます。

両方を並べて、もう一度聴き直しても、どちらもいい、と思うばかりで、優劣はつけられませんでした。

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