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エリー・グリニッチ追悼 その13 ロネッツ“アイ・キャン・ヒア・ミュージック”(I Can Hear Music by the Ronettes)

2009-10-16

曲名
アイ・キャン・ヒア・ミュージック(I Can Hear Music)
アーティスト
The Ronettes
収録アルバム
All the Hits
作曲者
ジェフ・バリー、エリー・グリニッチ、フィル・スペクター(Jeff Barry, Ellie Greenich, Phil Spector)
リリース年
1966年


わたしは、この曲がそれほど好きではないのですが、お好きな方もすくなくないようなので、大嫌いというわけでもないから、流れに棹ささず、いちおう押さえておく、という気分で聴いてみます。

あまり好きではない理由のひとつは、意外にむずかしい曲なのか、どのヴァージョンも納得のいく出来ではない、ということです。その点で、ちょっとSpanish Harlemに似ています。あの曲も、ローラ・ニーロのものが65点ぐらいで、あとはみな出来が悪く、ついに決定版は生まれませんでした。どういうわけか、だれがやってもうまくいかない曲というのがあるものです。


☆ ロネッツ ☆


アーティスト名なし、というわけにはいかないから、いちおうロネッツを看板に立てましたが、これはフィル・スペクターは立ち会っていないのではなかったでしたっけ? スペクターがこれをプロデュースしたとしたら、バッド・トリップしていたとか、二日酔いだったとか、そんなあたりではないでしょうか。フィル・スペクターの仕事と呼べるようなレベルにはなっていません。



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フィレーズとアブコの契約は終わったそうなので、そろそろ新しいベスト盤が出るのでしょうが、I Can Hear Musicを収録したベスト盤はあまり多くありません。


☆ ビーチボーイズ ☆


つぎはビーチボーイズ盤ですが、これもとくにいいとは思えないプロダクションです。



ブライアンが引きこもりになってからのビーチボーイズはまったくダメだとはいいませんが、しかし、この曲はつくりがスカスカで、聴いていて気分が沈みます。もっとマシなものがつくれたでしょうに。

ブライアン・ウィルソンの絶頂期の仕事は「まったく別個のもの」として分離してしまい、ブライアンとはいっさい無関係なコーラス・グループのトラック、というレベルまで下ろして、やっと話がスタート地点にたどり着く、というあたりではないですか。

浪速のことは夢のまた夢として、Pet Soundsまでのことはいっさいなかったことにするなら、このコーラス・グループは、音楽史的重要性はゼロではあるけれど、割りたくなりはしない盤もいくつか残した、そのうちの一枚はこのシングルである、ぐらいのことはいっていいでしょうが、それ以上ではありません。


20/20
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☆ ヴェンチャーズ ☆


この曲が収録されたアルバム、Hawaii 5-0のタイトル・チューンだけは、基本的なパーソネルがわかっています。リード・ギターがトミー・テデスコ、フェンダー・ベースがキャロル・ケイ、ドラムズがジョン・グェランです。テデスコは彼の自伝、ケイはオフィシャル・サイトのBBSで自分のプレイだと証言し、ドラムはジョン・グェランだと記憶していました。

アルバムではなく、あくまでもHawaii 5-0というトラックについてのことですが、トミー・テデスコは、最初に呼ばれたギタリストが譜面を読めず、急遽、自分が呼ばれて、譜面通りに弾いたと自伝に書いています。

ventures hawaii 5-0

こういう場合、シングルの録音だけで、あとはやっていない可能性もあります。音を聴いてどうか? I Can Hear Musicも、サウンド自体はトミーと同じテレキャスターの音に聞こえますが、プレイについてはなんともいいかねます。このようなフラット・ピッキングと同時に、中指や薬指でフィンガリングをするという奏法は、典型的なトミー・テデスコのスタイルではありません。

ベースについても、キャロル・ケイかというと、さあて、どうでしょうか。すこし走っているのが気になります。彼女も不調の日があって、タイムが不安定な録音を残していますが、それは稀なことです。

以上、どういうメンバーであれ、このトラックにはグッド・フィーリンがありません。


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☆ カリフォルニア・ミュージック ☆


ディスコ・アレンジのI Can Hear Musicです。わが家にあるカリフォルニア・ミュージックのCDには、お節介にもロング・ヴァージョンまで入っていて、笑う気すら失せました。

裏町でゴミ漁りをするのはやめよう、表通りのまともな音楽について語ろうと、わたしはつねづねいっているのですが、若いうちというのは、マイナーなもののほうに価値があると思いこむもので、ふりかえれば、自分にもそういう時期があったことに思いあたります。

わたしは、カート・ベッチャーなどにはまったく興味がありません。そもそも、なにをする人なのですか。ちょっとヴォーカル・アレンジのようなことをしただけでしょうに。そういう人は、ハリウッドではアレンジャーの数に入れません。ヘヴィー級がひしめいているのだから、モスキート級など、はなからお呼びではないのです。

california music

明るい大通り、ハリウッド・ブールヴァードに立って、「ハリウッドのアレンジャー」に思いをいたすと、たとえば、ビリー・メイ、ネルソン・リドル、アクスル・ストーダール、ゴードン・ジェンキンズ、ショーティー・ロジャーズ、ニール・ヘフティー、ラロ・シフリン、アーニー・フリーマン、ヘンリー・マンシーニといった人たちの顔が浮かんできます。アレンジャーとして評価するなら、こういう人たちと比較してどの程度の力量か、と問わなければいけません。裏町のゴミ缶の上でドングリの背比べなどしても無意味なのです。


☆ エリー・グリニッチ ☆


毎度、あまり褒めないエリー・グリニッチのセルフ・カヴァー集ですが、ひどいものを聴いたあとだと、まともな音のように聞こえるので、この曲については得をしています。いえ、この曲にはこのヴァージョンだけしかなかったとしたら、べつに悪くもないけれど、わざわざ聴くほどでもない、ぐらいで片づけたでしょうけれど!

結局、ほかにマシなものがないので、やはりロネッツ盤とビーチボーイズ盤が、この曲のまともなレンディションということになるのでしょう。まったくレベルの低いレースで、どこかにわたしの知らないまともなものがあるんじゃないかなあ、とボヤいて、本日はおしまい。



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テーマ : 60年代の輪郭(音楽)
ジャンル : 音楽

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才能ある兄と弟

こちら、はじめまして、です。

アメリカに四十九日があるわけでもないでしょうし、喪に服していたわけではないのですが(だいたい51日くらい経った)、書き込みしようと思いながら、なかなか書き込めなかった強力な追悼特集、13回目まできて、初のコメントさせていただきます。

>お好きな方もすくなくないよう
多いか分かりませんが、僕もこの曲、大好きなクチの一人です。
ただ、ロネッツ盤はほとんど聴きません。ビーチボーイズ盤のみが、愛情注入の対象です。

BB5版のこの曲は、カールがプロデュースですよね。なので、ブライアン(のペット・サウンズ)と比べるというのは、ちょっと酷ではないでしょうか。『20/20』なら「I Went To Sleep」と比べるのがよいのではとおもいます(←それじゃ、エリー・グリニッチ特集じゃなくなっちゃう……)

コカイン漬けでやる気がでない兄ちゃんを尻目に、今までの兄ちゃんの作り出してきたサウンドを追い越そうとまではしないまでも、見よう見まねで(?)、ギターで音を厚めにして、ロネッツの元曲よりもいいカヴァーを作り出したカールは、よく頑張ったと思います!兄弟間の絶対評価じゃなくて、属人別に相対評価でいくなら90点あげちゃいます。もし、兄弟で才能に差があると気づいたときに、人は絶望するか、自分なりにやってみようと思うか、やっぱり分かれるだろうと思います。その決め手ってなんだろう?、

songsformoviesさんの点数は厳しいかもしれませんが、「God only knows」を長いこと聞き親しんでいることもあり、カールの歌声をメインにして、きれいなハーモニーがついている曲というだけでも相当の加算点が入ります。

結果として、僕の中では80点の満足曲ですし、チャートで24位というのも頷けます(TOP5は難しいだろうけど、13位ぐらいまでいってもいいように思います)。

あと何回か続くのかわかりませんが、追悼特集、これからも続けてください。最後まで見守ります!

鋭敏な精神が生むシャープなサウンド

いらっしゃいませ、tonieさん。エクサイトよりこちらのほうがずっと自由で書きやすいのではありませんか?

> BB5版のこの曲は、カールがプロデュースですよね。なので、ブライアン(のペット・サウンズ)と比べるというのは、ちょっと酷ではないでしょうか。

ええ、それで、ブライアン・ウィルソンとはいっさい関係のない無名コーラス・グループという扱いをしました。ブライアンの残像なし、裸の音を聴いたつもりです。

> ロネッツの元曲よりもいいカヴァーを作り出したカールは、よく頑張ったと思います!

わたしは冷たいのか、いいか悪いかというときに、情状酌量はしないのです。よくご存知でしょうが!

> もし、兄弟で才能に差があると気づいたときに、人は絶望するか、自分なりにやってみようと思うか、やっぱり分かれるだろうと思います。その決め手ってなんだろう?、

将来はビーチボーイズかという三兄弟の親御さんともなると、やはり兄弟を見るまなざしが暖かいですねえ。それで一言となりましたか?

経験上、弟は直感的にまったくべつの道を選ぶと思います。わが愚兄とわたしは、生活の細部に至るまですべて正反対のような気がします。比較の土台がまったくないのです。

> songsformoviesさんの点数は厳しいかもしれませんが、「God only knows」を長いこと聞き親しんでいることもあり、カールの歌声をメインにして、きれいなハーモニーがついている曲というだけでも相当の加算点が入ります。

おっしゃるとおり、そのへんは非常に点が辛いですね。カールが嫌いなのかも! 非ブライアン・ビーチボーイズでだれを聴くかというと、デニスです。だから、黄昏の時代でもっとも好きなアルバムはCarl & the Passions/So Toughです。あのデニスの2曲です。

すこしだけ本文を補足します。わたしが気に入らないのは、サウンドです。ただ、スカスカだから、厚くしてくれればいい、という単純なことでもありません。

シンプルだけれどきわめて魅力的なサウンド、というものもあります。たとえば、わたしなら、そういう音作りを得意とした人として、アル・ディローリーをあげます。グレン・キャンベルのBy the Time I Get to PhoenixやWichita Linemanのサウンドです。ああいう作り方があるのです。もちろん、彼が有能で、知識も経験も豊富だったから、ミニマルな材料で、マキシマムな効果をあげたのですが、でも、それが才能というものなのです。

I Can Hear Musicがダメだといったのは、ブライアンの緻密な音作りと比較してのことではなく、たとえば、アル・ディローリーの一筆書き的なサウンドのようには、ひらめきを感じず、可能性があるとも思えないからです。ただそこにあるメロディーをそのままやっただけ、と見ました。もっと遠くまで、その楽曲の可能性を追求しなければいけないのです。才能のあるアレンジャー、プロデューサーは、努力ではなく、直感でそれを実現しています。

> あと何回か続くのかわかりませんが、追悼特集、これからも続けてください。最後まで見守ります!

あと3、4回でしょうかね。ちょっと考えてみればおわかりのように、まだイヤになるような大物が残っているわけで……。まず、チャート・トッパーと「世紀の大ミス」があるでしょ、ロネッツのいいものが2曲でしょ、ボビー・ヴィーも入れたいし、いや、最後は端折っちゃうでしょうけれど!
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