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60年代の輪郭 『夕陽のガンマン』のテーマ〈For a Few Dollars More〉

2009-07-05

曲名
For a Few Dollars More
アーティスト
エンニオ・モリコーネ作(Ennio Morricone)
収録アルバム
For a Few Dollars More(『夕陽のガンマン』オリジナル・サウンド・トラック盤)
作曲者
エンニオ・モリコーネ(Ennio Morricone)
音楽監督
エンニオ・モリコーネ(Ennio Morricone)
映画タイトル
『夕陽のガンマン』
原題
For a Few Dollars More
監督
セルジオ・レオーネ(Sergio Leone)
リリース年
1965年

日本では『続・荒野の用心棒』という邦題をつけられた映画があるのですが、これは『荒野の用心棒』とはまったく無関係で、続篇でもなんでもありません。たんに、『荒野の用心棒』の直後に製作されたイタリア製西部劇に、ヒット作の名前を借用してだけのまがい物です。

Title

『荒野の用心棒』には、正真正銘の続篇があります。『夕陽のガンマン』という邦題をつけられた映画がそれです。監督のセルジオ・レオーネ、音楽のエンニオ・モリコーネ、主演のクリント・イーストウッド、さらには敵役のジャン=マリア・ヴォロンテと、スタッフおよびキャストは『荒野の用心棒』と同じ布陣になっていますし、最初がA Fistful of Dollars=「一握りの金」というタイトルだったものが、今度はFor a Few Dollars More「もうすこし稼ぐために」というタイトルになったわけで、日本以外の国では、『夕陽のガンマン』は『荒野の用心棒』の続篇であると、疑いの余地なく理解されています。

メイン・タイトル


☆スケール・アップ☆

続篇の作り方というのは一様ではないでしょうが、セルジオ・レオーネはスケール・アップする方向をとりました。賞金稼ぎ側がクリント・イーストウッドだけでなく、リー・ヴァン・クリーフも加わって『荒野の用心棒』の倍になったのに呼応するように、前作と同じジャン=マリア・ヴォロンテの悪玉ボスの片腕として、クラウス・キンスキーが加わり、こちらもパワー・アップしました。ヴァン・クリーフ、キンスキー、どちらも物語を豊かに味つけするのに成功していて、この作品の大きな魅力になっています。

Claus Kinsky and Lee Van Cleef

キャストが複雑になっただけでなく、当然ながらプロットも複雑な方向へと変化していますし、画面からも予算が増えたことが伝わってくるほどで、前作の襤褸は着ても心は錦といったような、「頑張り」ないしは「突っ張り」は感じられなくなり、余裕のある物語になっています。

長い時間がたって振り返ってみると、第一作『荒野の用心棒』の無言の迫力とでもいったものがもっとも心に残っていることに気づきますが、『夕陽のガンマン』には、『荒野の用心棒』にはなかった軽みがあります。当時もその点が面白く感じられましたが、いま見ても『夕陽のガンマン』の大きな魅力はそこにあると感じます。

セルジオ・レオーネ監督がそこまで意識していたかどうかはわかりませんが、『荒野の用心棒』と『夕陽のガンマン』の関係は、『用心棒』と『椿三十郎』の関係によく似ています。一作目はシンプルで押しの強い戦いぶりをするキャラクターだったのに対し、続篇ではすこし引いて、余裕をもって戦う人物像に変化しているのです。ユーモアの濃度にそのちがいがよくあらわれていて、黒澤明、セルジオ・レオーネ、どちらの場合も、続篇のほうが笑えるシーンが多くあります。

ともあれ、あれこれ総合的に考え合わせて、ここまでの二作に関するかぎり、『荒野の用心棒』、『夕陽のガンマン』、どちらがどちらと甲乙つけがたい勝負ではないでしょうか。

☆2種類のDVD☆

夕陽のガンマン アルティメット・エディション
For a Few More Dollars DVD ultimate ed

『荒野の用心棒』の3枚組同様、こちらも山田康雄が吹き替えたテレビ放映版が加えられています。例によって、「特典」なしのシンプルなものもあります。

For a Few More Dollars DVD

☆『夕陽のガンマン』のテーマ☆

映画のほうは、どちらがいいともつかないのですが、音楽については〈夕陽のガンマン〉のほうを好ましく感じます。〈さすらいの口笛〉が日本で大ヒットしたのはよくわかるのですが、あれはマイナーの臭みが強すぎて、演歌的に感じます。アメリカのアレンジャーたちが料理方法に迷い、手をこまねいたのは当然でしょう。

〈夕陽のガンマン〉のテーマも、基本的なフォーマットは〈さすらいの口笛〉の延長線上にあります。マイナーコードを中心として、口笛やギターがリードをとり、ゴング、コーラス、ストリングスなどで味つけをするパターンです。〈夕陽のガンマン〉ではジューズ・ハープ(またはジョーズ・ハープ)が使われているのが前作とは異なりますが、これはいわば目先を変えるためのもので、効果的ではあるものの、本質的ではありません。

重要なのは、〈さすらいの口笛〉にあったマイナーの臭みが緩和されたことのほうでしょう。また、前作のヒットを受けて予算が潤沢になったのか、ストリングスの人数が大幅に増加して、奥行きのあるサウンドへと変化してもいます。

ちなみに、曲の冒頭で使われているジューズ・ハープはビヤボンに似た楽器で、歯のあいだに挟み、中心にある針金の先端を弾いて音を出します。

Jew's Harp

ジューズ・ハープ


☆〈夕陽のガンマン〉を収録した代表的なCD☆

非常に人気のある映画であり、音楽なので、サウンドトラック盤はつねになんらかの形で手に入りましたが、わずか8曲、演奏時間は16分あまりと、異例のアルバムです。

For a Few Dollars More
For a Few More Dollars OST

1. La Resa Dei Conti
2. Osservatori Osservati
3. II Vizio Duccidere
4. II Colpo
5. Addio Colonnello
6. Per Qualche Dollaro In Pi
7. Poker DAssi
8. Carillon

このように、ひどく曲数が少ないため、昔から『荒野の用心棒』と合わせて1枚にしたアルバムも出まわっています。ジャケットは『夕陽のガンマン』そのままで、表からでは区別がつかないこともあります。

A Fistful of Dollars/For a Few Dollars More
01. Titoli
02. Almost Dead
03. Square Dance
04. The Chase
05. The Result
06. Without Pity
07. Theme From A Fistfull Of Dollars
08. 'A Fistfull Of Dollars' Suite
09. La Resa Dei Conti
10. Osservatori Osservati
11. Il Vizio Di Uccidere
12. Il Colpo
13. Addio Colonnello
14. Per Qualche Dollaro In Piu
15. Poker D'Assi
16. Carillon

エンニオ・モリコーネは長いキャリアのあいだに、過去の曲を再録音したことがなんどかあり、近年の編集盤には、再録音のトラックが収録されていることもあります。The Very Best of Ennio Morriconeというベスト盤は、選曲はいいのですが、〈夕陽のガンマン〉は、オリジナル・ヴァージョンではなく、後年の再録音ヴァージョンが収録されています。管楽器を目だたせたアレンジで、これはこれで興味深いところがありますが、どちらが好きかというなら、やはりオリジナルに軍配が上がるでしょう。

The Very Best of Ennio Morricone
the very best of ennio morricone front

マイナーの臭みが和らげられたせいか、それともアメリカでの映画の公開時期のせいか、〈さすらいの口笛〉よりカヴァー・ヴァージョンの数が増え、同時に、楽しめるものがあらわれます。そのあたりは次回に。
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テーマ : 60年代の輪郭
ジャンル : 映画

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