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エリー・グリニッチ追悼 その3 アンドルー・ゴールド“ドゥー・ワー・ディディ”(Doo Wah Diddy-Diddy by Andrew Gold)

2009-09-17

曲名
“ドゥー・ワー・ディディ”(Doo Wah Diddy-Diddy)
アーティスト
アンドルー・ゴールド(Andrew Gold)
収録アルバム
『ホワッツ・ロング・ウィズ・ディス・ピクチャー?』(What's Wring with This Picture?)
作曲者
ジェフ・バリー、エリー・グリニッチ(Jeff Barry, Ellie Greenich)
リリース年
1977年
andrew gold


ジェフ・バリーとエリー・グリニッチというのは、循環コードの使い方で勝負したソングライター・チームで、代表作を並べてみると、おやおやと思います。

根本にはI-IVパターンがあり、このすぐ下の兄弟のような位置にI-IV-Vパターン、つまり3コードのいわゆるトゥイスト・アンド・シャウト進行があって、どちらももちろん他のソングライターチームも多用したのですが、とりわけバリー=グリニッチは、すべての曲がこのパターンのヴァリエーションであると断言したくなってしまうほどです。

jeff barry and ellie greenwich

もちろん、メイジャーの3コードばかりでなく、マイナーをまじえた花はどこへ行った4コード・パターン、ザ・ウェイト4コード・パターン(C-Em-F-G7)とそのヴァリエーションもあります。われわれが漠然と循環コードといっているものはすべて使っているにちがいありません。

以上は主としてヴァースのみに関するローカルなパターンですが、もっと広げて曲全体の流れでいっても、たとえば、ヴァースはC-F-G、ブリッジはEm-Am-Dm-Gというような、メイジャーとマイナーのコンビネーションによるパターンも、C-F-Gに劣らぬほど多用した組み合わせです。バリー=グリニッチとは、よかれ悪しかれ、パターン・ソングライティングのチームだったといっていいでしょう。

誤解しないでいただきたいのですが、パターン・ソングライティングはダメだ、といっているわけではないのです。理解の基盤として、そういう事実を見据えるべきである、といっているだけです。

☆ マンフレッド・マン・ヴァージョン☆


本日の「ドゥー・ワー・ディディ」もまた、メイジャーのヴァースと、マイナーが勝ったブリッジを組み合わせた、これぞポップ・チューンというパターンであり、伝統音楽やジャズではぜったいに味わえないたぐいの、力強さとささやかな叙情性が融合したタイプの曲です。

「ドゥー・ワー・ディディ」といえばマンフレッド・マンということになっているようなので、まずは彼らのヴァージョンからいきます。

わたしは、この時期のマンフレッド・マンのリード・ヴォーカル、ポール・ジョーンズの声と歌い方は、子どものころから好きでした。ちょっとパセティックな曲が合うタイプの声なのですが(映画『傷だらけのアイドル』の挿入曲、Free Meなんかピッタリだった)、そういう声と、この曲のハード・ドライヴィングなヴァースはいい対比を成していますし、マイナーにいくブリッジでは、ポール・ジョーンズならではの味があります。

paul jones privilage lp front
ポール・ジョーンズが映画『傷だらけのアイドル』(Privilege)で歌ったFree Meは印象深い。日本では沢田研二が手錠をはめるフリまで含めて丸ごとカヴァーした。いや、鉄格子は使わなかったか?

コンボ・オルガンのサウンドもあの時代らしいし、ドラムとベースのグルーヴもまずまずで、これでヒットしなかったらこの世は闇というぐらいに、シングル盤のつくり方の基本をきちんと押さえたプロダクションになっています。いまだにこの曲の決定版と見なされているのは当然です。

なお、わが家にあるマンフレッド・マンのベスト盤には、unedited ver.というものが収録されています。そういうものが気になる方もいらっしゃるでしょうが、これがリリースされなかったのは当然で、たんなる出来損ないにすぎません。編集済みの完成品だけあれば十分です。

マン・メイド・ヒッツ・プラス(紙ジャケット仕様)
マン・メイド・ヒッツ・プラス(紙ジャケット仕様)

この盤には「ドゥー・ワー・ディディ」のロング・ヴァージョンとやらも入っているそうですが、オマケはどこまでいってもオマケ、それ以上のものではありません。


At Abbey Road 1963-1966
At Abbey Road 1963-1966
ベスト・コンピレーションとしては、こちらのほうが正統的で信頼できます。マンフレッド・マン・エディションにかぎらず、このAt Abbey Roadシリーズはいずれもマスタリングがすばらしく(たとえばホリーズの2枚、シャドウズ、スウィンギング・ブルー・ジーンズなど)、「定本を残す」というEMIの意気込みが伝わってきます。

たんなるついでですが、ポール・ジョーンズは今年、新しい盤をリリースしました。わたしはまだ聴いていませんが、どんなものでしょうね。プロデューサーのバリー・ゴールドバーグはあのキーボード・プレイヤーでしょう。ドラムのエド・グリーンも、ジャクソン5、ジョニー・リヴァーズ、グラス・ルーツなどで叩いたあのスタジオ・ドラマーでしょうね、たぶん。ポール・ジョーンズの年齢に合わせたヴェテラン集団!

Starting All Over Again
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☆ アンドルー・ゴールド ☆


エリー・グリニッチのオフィシャル・サイトの楽曲/アーティスト一覧にすら名前が挙がっていないのですが、アンドルー・ゴールドはこの曲を1977年のアルバム『ホワッツ・ロング・ウィズ・ディス・ピクチャー』(What's Wrong with This Picture)でカヴァーしています。これはマンフレッド・マン盤に比肩するヴァージョンだとわたしは考えます。

アンドルー・ゴールドは、リンダ・ロンシュタットのセッションで、ギター、ピアノ、ドラムなどをプレイして、八面六臂の活躍をしたことで世に知られたプレイヤーですが、とりわけ、ギター・ソロのアレンジに関しては、史上最高のひとりといっていいでしょう。

andrew gold

プレイの「腕力」より、構成力にひいでた人で、印象深いソロがたくさんあります。思いつきのフレーズを力任せに弾くことはなく、アイディアをよく練って発展させ、きれいなピッキングとていねいな録音で仕上げる、というタイプです。とりわけ、ギターの重ね方のうまさでは、ヴェンチャーズ(たとえばLolita Ya Ya)やトッド・ラングレン(Love of a Common Man)にくらべても遜色ありません。

アンドルー・ゴールドの「ドゥー・ワー・ディディ」の魅力は、やはりギターのアレンジメント、配置、サウンド、音のレイヤーの重ね方などで、すべてギターがらみです。とくに間奏は、音色の選択とレイヤーがみごとで、一瞬で終わってしまうのが残念でなりません。

アンドルー・ゴールドの父親が『栄光への脱出』をはじめ、数々の映画音楽をつくったアーネスト・ゴールドであり、母親が、『サウンド・オヴ・ミュージック』で尼僧を演じたことをはじめ、映画音楽をたくさんやったスタジオ・シンガーのマーニー・ニクソン(ほんの一例を挙げれば、マリリン・モンローやオードリー・ヘップバーンのスタンドインをやった)だということを、ほんの数カ月前、Songsf for 4 Seasonsブログのほうで『栄光への脱出』を取り上げたときに知りました。

earnest gold
アンドルー・ゴールドの父親、アーネスト・ゴールドは、『栄光への脱出』(Exodus)の音楽でオスカーを得た。

marnie nixon
アンドルー・ゴールドの母親、マーニー・ニクソン(中央)はさまざまな女優のスタンドインとして、数多くの映画で歌った有名なスタジオ・シンガー。写真は『サウンド・オヴ・ミュージック』出演時のもの。

あまり表に出なかった両親のキャリアと同じく、アンドルーも、リンダ・ロンシュタットのスタッフとして知られましたが、幸い、ソロでLonely BoyとThank You for Being My Friendのヒットを生んでいます。残念ながら、父親のように、ビルボード・チャート・トッパーとなり、無数のカヴァーが生まれ、スタンダードになるような曲は書けずに終わりそうですが。



What's Wrong with This Picture?

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検索で引っかかるように、一般的なアンドリュー・ゴールドという表記も書いておきます。わたしはこういう発音はしませんが。アンドルーズ空軍基地と同じように、Andrew GoldやAndrews Sistersも古代表記は廃止して、現代表記で統一してもらいたいものです。
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ジャンル : 音楽

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