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追悼 レス・ポール その2 It's Been a Long Time by Bing Crosby with Les Paul

2009-08-16

曲名
イッツ・ビーン・ア・ロング・タイム(It's Been a Long Time)
アーティスト
ビング・クロスビー・ウィズ・レス・ポール(Bing Crosby with Les Paul)
収録アルバム
レス・ポール『ザ・コンプリート・デッカ・トリオズ・プラス』(The Complete Decca Trios - Plus (1936-1947)
作曲者
サミー・カーン、ジュール・スタイン(Sammy Cahn, Jule Styne)
リリース年
1945年
The Complete Decca Trios - Plus


わたしが最初に聴いたレス・ポールは、戦後のキャピトルのカタログで、そのあとで戦前の録音へとさかのぼりました。現代のレス・ポール・ファンのマジョリティーは、こういう道をたどっているのではないでしょうか。

いまではThe Complete Decca Trios - Plus (1936-1947)という2枚組が出ていて、ごく初期から戦後、Loverで革命時代に突入する直前までのレス・ポールのプレイを簡単に通覧することができます。

このセットのディスク1の冒頭数曲は、デッカのブラック・シンガー、ジョージア・ホワイトの歌伴です。こうしたトラックはどれも、ギターが出てきた瞬間、だれでもすぐに感じるほど、ジャンゴ・ラインハルトの影響が濃厚です。

十代のころはジーン・オートリーが好きで、彼のショウでステージにあがってギターを弾いたというほどで、レス・ポールのルーツはヒルビリーなのです。じっさい、アコースティック・ギターとホルダーにつけたハーモニカだけで、自分で歌って(!)録音した、Deep Elem Bluesなんていう曲も収録されています。

youg les paul

レス・ポールがジーン・オートリーのファンで、自分でヒルビリーを「歌って」いた、というのは、やや意外ではありますが、いっぽうで、なるほど、それでわかった、とも思います。

マイルズ・デイヴィスがかつてレスターに会ったとき、どうしたらヒットが手に入るんだ、俺は死ぬほどヒットがほしい、といったそうです。レスターは「メロディーをプレイするんだ。彼らのためにプレイするのさ」とこたえたそうです。

これが戦前にスタートしたプレイヤーの基本的な考え方でしょう。落語が芸術になったらおしまいなように、ジャズも娯楽音楽でありつづけるべきだったのです。レスターも、あるいは、バディー・リッチあたりも、戦後のモダン・ジャズのプレイヤーとはまったく違う世界に生きていました。芸人と芸術家の違い、といっては単純化しすぎの誹りを免れませんが、そういうニュアンスです。

レスターのそういう思考回路は、やはりヒルビリーが好きで、ジーン・オートリーにあこがれた、という少年時代と無関係ではないでしょう。こういう「ポップ指向」が、彼の歩みを決定したような気がします。いや、わたしがいおうとしているのは、彼のすべて、という意味です。サウンド、プレイ・スタイル、技術開発、選曲、アレンジ、つまり、ミュージシャンおよび録音技術革新者としてのあり方のあらゆる側面を決定したのです。

☆ エレクトリック・ギターの艶 ☆


マイルズ・デイヴィスの問いかけに、レスターがどう答えたにせよ、これはその人の全存在にかかわることなので、質問も無意味、回答も無意味です。レス・ポールは、本質的に、楽しいことだけをやりたくて、生涯、そのことだけを考えたのだろうと想像します。楽しい音楽を、楽しいサウンドで、楽しくやり、そして、リスナーのうれしそうな反応を楽しんだのです。芸術的志など、一度ももったことがないにちがいありません。

ジャンゴ・ラインハルトに強い影響を受けたのは、いってみればテクニカルな側面であって、attitudeは本質的に異なります。それが、アコースティックからエレクトリックへと楽器を替えた、根源的な動機ではないかと想像しています。わたし自身、子どものときに感じ、いまもそう思いますが、エレクトリックのほうが、ずっと華やかで、はるかに楽しいのです。レスターは派手好きだったにちがいありません。

アコースティックのプレイではじまったThe Complete Decca Trios - Plusは、11曲目にはエレクトリックによる、テリー・シャンド・オーケストラ(Terry Shand and His Orchestra)の〈シンディー〉(Cindy)になり、以後はずっとエレクトリックです。

エレクトリックのほうがずっとレス・ポールらしいし、ジャンゴ・ラインハルトのコピーキャットを聴く居心地の悪さからも解放されます。ディスク1のトラック13以降に収められた、トリオ時代の録音になると、戦後のレス・ポールにつながる要素があらわれはじめ、聴く側のわれわれの脈拍も速くなります。

les paul trio

ディスク1に収録された、〈ドリーム・ダスト〉(Dream Dust)〈ダーク・アイズ〉(Dark Eyes)〈マイ・ブルー・ヘヴン〉(My Blue Heaven=「わたしの青空」などの邦題もあり)〈ビギン・ザ・ビギン〉(Begin the Beguine)などは、やはり素直に、いいなあ、と感じます。本来的にタイムがよく、それがレス・ポールの盤に共通するグッド・フィーリンを生んでいるのだろうと思います。

☆ 共演者たち ☆


こんな書き方では、2枚のCDに50曲を収めたこのセットの最後にはいつまでたってもたどり着けないので、すこし急ぎます。

みずからのトリオでのプレイももちろん素晴らしいのですが、さまざな歌伴も収録されていて、これがまた、主役たちの歌とレスターのギターがしばしば面白い対比を成し、おおいに楽しむことができます。

なかでも素晴らしいのは、第二次大戦が終結した1945年にチャート・トッパーになった、ビング・クロスビーの〈イッツ・ビーン・ア・ロング・タイム〉(It's Been a Long Time)ではないでしょうか。



もちろん、クロスビーのヒット曲として有名なのですが、レス・ポールのプレイも、ギミックなしなのに、いかにもレスターらしいと感じさせるサウンドとスタイルです。楽曲よし、ビングのレンディションみごと、そして、レスターのギター・プレイも楽しく、文句なしのトラックです。

もう1曲あげておきましょう。レス・ポール・トリオをバックにアンドルーズ・シスターズが歌った〈イッツ・ア・ピティー・トゥ・セイ・グッドナイト〉(It's A Pity To Say Goodnight by the Andrews Sisters with the Les Paul Trio)です。



これまたアンドルーズのヴォーカル・ハーモニーと、レス・ポールのギター・サウンドの対比に味があります。頭からギターのソロではなく、このように、独特のテクスチャーをもつハーモニーのあとにレスターが出て行くと、純粋なインストゥルメンタルとは大きく異なった印象を受けるわけで、そこが歌伴の面白みでしょう。

あと一、二回、レス・ポールの記事をつづけるつもりでいます。次回はDVDか、はたまたべつの編集盤か、いまのところはまだ決めかねています。

The Complete Decca Trios -- Plus (1936-1947)
Les Paul
MCA (1997-11-18)
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Les Paul "Decca Complete Trios - Plus (1936-1947)"
01. Les Paul With Georgia White - New Dupree Blues
02. Les Paul With Georgia White - Daddy Let Me Lay it on you
03. Les Paul With Georgia White - I Just Want your Stingaree
04. Les Paul With Georgia White - Black Rider
05. Les Paul With Georgia White - I'll Keep Sittin' on it (If I
06. Les Paul with Georgia White - Trouble in Mind
07. Les Paul As Rhubarb Red - Just Because
08. Les Paul As Rhubarb Red - Just Because Answer
09. Les Paul As Rhubarb Red - Deep Elem Blues #2
10. Les Paul as Rhubarb Red - Deep Elem Blues
11. Les Paul With Terry Shand and His Orchestra - Cindy
12. Les Paul with Terry Shand and his Orchestra - Flipino Hombre
13. Les Paul and his Trio - Dream Dust
14. Les Paul and His Trio - Begin the Beguine (1)
15. Les Paul and His Trio - Dark Eyes
16. Les Paul and His Trio - Blues Skies (1)
17. Les Paul and His Trio - Blues Skies (2)
18. Les Paul and His Trio - Begin the Beguine (2)
19. Les Paul and His Trio - Dream Dust (2)
20. Les Paul and His Trio - Dark Eyes (2)
21. Les Paul with Bing Crosby - It's Been a Long, Long Time
22. Les Paul with Bing Crosby - Whose Dream Are You?
23. Les Paul and His Trio - Hawaiian Paradise
24. Les Paul and His Trio - My Isle of Gloden Dreams
25. Les Paul with Helen Forrest - Spellbound
26. Les Paul with Helen Forrest - Everybody Knew But Me
01. Les Paul with Helen Forrest - Baby, What you Do For For Me
02. Les Paul with Helen Forrest - Everybody Knew But Me
03. Les Paul and His Trio - Song of the Islands
04. Les Paul and His Trio - Sweet Leilani
05. Les Paul and His Trio - Kings Serenade
06. Les Paul and His Triol - To you, Sweetheart, Aloha
07. Les Paul and His Trio - Sweet Hawaiian Moonlight
08. Les Paul and His Trio - Aloha Oe
09. Les Paul with Bing Crosby - Pretending
10. Les Paul with Bing Crosby - Gotta Get Me Somebody to Love
11. Les Paul with Delta Rhythm Boys - One-Sided Affair
13. Les Paul With the Andrews Sisters - Rumors Are Flying
14. Les Paul With the Andrews Sisters - It's a Pity to Say Goodnight
15. Les Paul and His Trio - Steel Guitar Rag
16. Les Paul and His Trio - Guitar Boogie (1)
17. Les Paul and His Trio - Guitar Boogie (2)
18. Les Paul and His Trio - Caravan
19. Les Paul and His Trio - Somebody Loves Me
20. Les Paul With Bing Crosby - Gotta Get Me Somebody to Love
22. Les Paul With Bing Crosby - Drifting and Dreaming (Sweet Paradise)
24. Les Paul with Dick Haymes - My Future Just Passed
12. Les Paul with Delta Rhythm Boys - What Would it Take?
21. Les Paul With Bing Crosby - What Am I Gonna Do About You?
23. Les Paul With Dick Haymes - What Are you Doing For New Years eve?
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テーマ : レコーディッド・ミュージックの歴史
ジャンル : 音楽

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