FC2ブログ

60年代の輪郭 『ロシアより愛をこめて』

2009-08-07

タイトル
ロシアより愛をこめて(From Russia with Love)
アーティスト
マット・モンロー(Matt Monro)
収録アルバム
『ロシアより愛をこめて』(OST)
作曲者
ジョン・バリー(John Barry)
音楽監督
ジョン・バリー(John Barry)
原題
From Russia with Love
監督
テレンス・ヤング(Terence Young)
リリース年
1963年
from russia with love dvd front


前回は、〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉各種カヴァーの締めくくりをしましたが、スパイ映画シリーズは今回も007で、映画の製作順にしたがって第2作の『ロシアより愛をこめて』へと進みます。

title 2 from russia with love

☆「ジェイムズ・ボンド的」なるものの確立☆


シリーズのなかでの『ロシアより愛をこめて』の位置づけをするなら、「フォーマットを確立した作品」というあたりではないでしょうか。微妙なことは抜きにして、箇条書きにできるようなことだけを抜き出すと、ジェイムズ・ボンド・シリーズのフォーマットとは、

・キャッチーなテーマ・ソング
・ボンド、M、Q、マニーペニーらのレギュラー陣
・Mがボンドに授けるガジェット、珍奇な秘密兵器
・スペクターないしはスメルシュなどの敵対組織が送りこんでくる、個性的かつ恐るべき殺し屋
・ボンドの敵、味方を問わず、美女の群れ
・ノン・ストップ・アクション
・アクションにおける、ときにユーモアをまじえた工夫
・世界の景勝地を飛びまわる豪華観光映画的絵作り
・アヴァン・タイトルの「短編アクション映画」


まだあると思いますが、とりあえず思いついたのは以上です。このうち、『ロシアより愛をこめて』で初登場したのは、

・キャッチーなテーマ・ソング
・Qとガジェット
・個性的で強いライヴァル(殺し屋)
・アヴァン・タイトル・シークェンス


ということで、順番だから、アヴァン・タイトル・シークェンスをどうぞ。


☆ガジェットの登場☆


のちにジェイムズ・ボンド・シリーズのひとつの柱となる〈Q〉とガジェットですが、『ロシアより愛をこめて』での〈Q〉の初登場はじつに地味で、ただあらわれ、ただアタッシュケースの仕掛けを説明し、それだけで退場します。

ガジェットそのものも、この時点では地味で、小さくたためる組み立て式のスナイパー・ライフル、ナイフ、火薬が仕込まれ、ついでにソヴリン金貨もしまってある(胴巻きか!)アタッシュケースだけです。もちろん、このガジェットのおかげで、のちにボンドは危地を脱するのですが、それにしても、たかがナイフ、たかが火薬、のちの派手な秘密兵器にくらべると、じつに控えめというか、遠慮がちというか、製作側としては小手調べ、観客の反応待ちだったのでしょう。

m q and bond from russia with love

いまの目で回顧すると、この『ロシアより愛をこめて』の段階ではガジェットに不満が残りますが、もっと絞り込んで、なにが足りないか、明確に指摘することができます。車です。モータリゼーションの時代にあっては、ボンド・カーは決定的な要素なのですが、それがこの映画ではまだ登場しないのです。いや、登場しないものをあげつらっても仕方ないので、ボンド・カーの話は先送りとします。

さてガジェットは地味ですが、これが活躍するシーンは、ボンド・シリーズに初めて登場した、個性の強い重要な悪役、ロバート・ショウの魅力もあり、また狭い列車のコンパートメントという舞台設定の妙もあって、きわめて魅力的なアクション・シーンになっています。

〈渡り鳥〉シリーズのごく初期、まだ「半分悪党」ではなく、百パーセント悪党だった〈エースのジョー〉はなかなか魅力的でしたが、アクション映画は敵役の魅力に負うところ大で、ボンド・シリーズのプロデューサーたちも、そこに力を入れることに思い至ったのでしょう。娯楽映画では、やはり定石をはずさないほうがいいのです。



☆世界をまたにかけて☆


『ドクター・ノオ』では、観光映画的側面はそれほど明確ではありませんでした。ジャマイカの風物は非常に魅力的に描かれていますが、それ以外の土地に移動するわけではないのが、観光映画としての要件を微妙にはずしているように感じます。

『ロシアより愛をこめて』はイスタンブールをおもな舞台としていますが、後半、鉄道での旅になり、最後はヴェニスでエンディングとなるわけで、前作より観光映画的色彩がはるかに明瞭になっています。

isutanbul 1 from russia with love

いまでは世界のどこへでも旅行できますが、あの時代、つまり、ひとりあたりの外貨持ち出しが500ドル以下に制限され、ふつうの人間が海外旅行に行くことなどなかったときには、世界各地の風物を見られるのは映画の大きな魅力であり、ジェイムズ・ボンドはそういう観客の要求も満たすようになったのです。

いや、いまでも、ロケ・シークェンスは魅力的なのではないでしょうか。どこへでも行けるようになったとはいえ、イスタンブールまで行く人はやはり少数派でしょうし、キャメラのフレームのなかの風景は、現実の風景とは大きく異なるものですから。

isutanbul 2 from russia with love

いずれにせよ、二作目にして、ジェイムズ・ボンド・シリーズではどこの土地に舞台を設定するかは映画の魅力にかかわる大きな要素なのだということが、だれに目にも明らかになったといっていいでしょう。

☆ノンストップ・アクション☆


『ロシアより愛をこめて』ではまた、アクション・シーンの数も増え、密度も頻度も高くなり、「ノンストップ・アクション」という性格が第一作より明瞭になります。

とくにイスタンブールを離れて列車に乗ってからは、前述のロバート・ショウとの死闘を切り抜けて、やれやれと思うまもなく、アルフレッド・ヒチコックの『北北西に進路を取れ』へのオマージュといわれるヘリコプターの襲撃、ボート・チェイス、ホテルの格闘と、文字どおりノンストップ・アクションになります。

boat chase from russia with love

アクションに工夫があることも重要ですが、もうひとつ重要なのは、こうしたたたみかける速度が、50年代的ではなく、60年代の感覚に合っていたことでしょう。映画の「ナラティヴのスピード」はこのころから加速しはじめたように思います。

「キャッチーなテーマ・ソング」の項については、次回、カヴァー・ヴァージョンも交えて検討したいと思います。

ロシアより愛をこめて (デジタルリマスター・バージョン) [DVD]ロシアより愛をこめて (デジタルリマスター・バージョン) [DVD]
(2007/08/25)
ショーン・コネリーロバート・ショー

商品詳細を見る


ロシアより愛をこめて (アルティメット・エディション) [DVD]ロシアより愛をこめて (アルティメット・エディション) [DVD]
(2008/12/19)
ショーン・コネリーロバート・ショー

商品詳細を見る


ロシアより愛をこめて [Blu-ray]ロシアより愛をこめて [Blu-ray]
(2008/12/19)
ショーン・コネリーロバート・ショー

商品詳細を見る
スポンサーサイト



テーマ : 60年代の輪郭
ジャンル : 映画

トラックバック

コメントの投稿

非公開コメント

最新記事
プロフィール

songsformovies

Author:songsformovies
黄金光音堂へようこそ!

counter
RSSリンクの表示
カレンダー
12 | 2020/01 | 02
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
カテゴリ
検索フォーム
最新コメント
月別アーカイブ
最新トラックバック
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
リンク