FC2ブログ

湖畔のふたり by 星野みよ子(『ゴジラの逆襲』『太平洋ひとりぼっち』『狂った果実』の訂正と補足 その1)

2009-07-18

時間がなくて、どこまで書けるかわかりませんが、ときおりわたしの記事の不備を指摘してくださる、まことにありがたいウェブ上の友人Oさんが、昨日、今日のメールのやりとりでいくつかの点をご教示してくださり、また、資料まで送ってくださったので、それをもとに、最近の記事を訂正、補足しようと思います。

まず、星野みよ子の〈湖畔のふたり〉です。これは、『ゴジラの逆襲』の記事では、タイトル未詳で、仮に〈丘のホテル〉と名づけておいた曲の正式なタイトルです。Tonieさんのコメントに対するレスにも書きましたが、これは『ゴジラ・サウンドトラック・パーフェクトコレクションBOX』というセットにボーナスとして収録されているのだそうです。

前々回の記事で、映画から切り出したこの曲の低音質のサンプルをアップしたところ、これまでのなかでも一、二を争うスピードでダウンロード数が伸びていて、驚いています。そして今日は、Oさんのご厚意で、高音質のファイルもアップできる運びになりました。

サンプル 〈湖畔のふたり〉

このヴァージョンでも、映画でブツッと切れた場所で切られているところを見ると、結局、この曲は既存の盤を利用したわけではなく、映画『ゴジラの逆襲』のためにつくられ、その際の録音しか残されていないということかもしれません。もっとも、日本の映画会社は資産の保全に神経質ではないので、どこかにフル・ヴァージョンが埋もれていないともいえませんが。

星野みよ子(『ゴジラの逆襲』より)

◆ 『太平洋ひとりぼっち』の共作形態 ◆◆
これもOさんにうかがってはじめて知ったのですが、『武満徹全集』というセットがあり、『太平洋ひとりぼっち』や『狂った果実』のスコアも収録されているのだそうで、解説をスキャンしたJPEGとサンプルまで頂戴しました。

盤のマスタリングは映画とは異なるし、そもそも光学録音と磁気録音では特性が異なるので、盤からのファイルを聴くと、ずいぶん印象がちがい、今日はおおいにリスニングを楽しんでしまいました。高音質サンプルとして、前回の記事で勝手に〈好天〉と名づけておいた曲をアップしました。すばらしい曲です。

キュー・シートの記載をそのままタイトルにしただけでしょうが、武満徹全集ではこの曲のタイトルは〈M6〉とされているそうです。それはどこの星雲ですか、てなもんで、あまりといえばあまりなタイトル!

サンプル 〈M6〉

Oさんがいっしょに送ってくださった解説のJPEGを読んで、うーむ、そうであったか、どうも失礼つかまつった、てえんで、泉下のマエストロに謝ってしまいましたよ。ひどい誤解をしていたのです。

前回も書いたように、この映画のクレジット・タイトルには、音楽は芥川也寸志と武満徹と並記されているだけで、作業分担を暗示する記載はまったくありません。わたしは、オーソドクスな曲調のものは芥川、ミュージック・コンクレート寄りのものは武満徹であろうと想定しました(いや、プロは技をもっている、お互いの役割を交換するという悪戯だってやりかねない、ということは書いておいたが)。これが大はずれだったのです。

アメリカ式にクレジットを細分化すると、「Music Supervisor-芥川也寸志」であり、「Music-武満徹」というべきで、芥川が音楽監督(およびアレンジとコンダクト)、武満が作曲という役割分担だったというのです。一般論として、オーソドキシーへの明確な理解のない人、基礎のできていない人には、アヴァンギャルドはつくれませんが、武満徹もまたこの原則の例外ではなかったようです。

ピカソの子どものころの絵を見ると、オーソドクスな意味で、つまり、写実という意味で、めちゃくちゃな馬鹿テクの持ち主だったことがわかりますが、武満徹もまた、その気になりさえすれば、保守的な意味での「いい曲」を書く能力は十分にもっていた、たんに資質として、そういうものに拘泥することを好まず、冒険的、発見的創作を指向しただけである、といっていいのでしょう。


◆ 音楽監督と作曲家 ◆◆
しかし、面白いのは、この映画のスコアに出てくる、いかにも武満徹作品らしいと感じさせる、ミュージック・コンクレート的な曲は、じつは、芥川也寸志の明快な指示のもとでつくられた、武満が我を通したものではなかった、ということです。どんな創作者もそうですが、単純化されたパブリック・イメージの向こう側には、複雑なキャラクターが潜んでいるもので、芥川也寸志と武満徹の場合も、それぞれにあまり表面には出てこない「劣性遺伝子」を抱えていたのでしょう。

もうひとつ指摘しておかなければいけないのは、芥川也寸志のオーケストレーションです。どうアレンジするかで、楽曲の色彩というのは大きく変化するものです。M6、すなわち、わたしが勝手に〈好天〉と名づけた曲に、あれほど軽快かつ叙情的な感覚が付与されたについては、楽曲よりも、アレンジ、サウンドの力が大きいといっていいでしょう。

そういう意味で、ヴェテラン芥川也寸志の老練さと、清新な感覚にみなぎった若い武満徹の『太平洋ひとりぼっち』は、理想的な共同作業だったといっていいのではないでしょうか。久しぶりにこの映画を再見して、スコアのすばらしさに強い感銘を受けました。

もはや時間切れのようなので、『狂った果実』の補足と訂正は次回へと繰り越させていただきます。この映画のスコアについても、わたしは大きな誤解をしていたようです。
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

最新記事
プロフィール

songsformovies

Author:songsformovies
黄金光音堂へようこそ!

counter
RSSリンクの表示
カレンダー
12 | 2020/01 | 02
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
カテゴリ
検索フォーム
最新コメント
月別アーカイブ
最新トラックバック
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
リンク