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Exodus by Ernest Gold (OST 『栄光への脱出』より その1)

2009-06-12

タイトル
Exodus
アーティスト
Ernest Gold (OST)
ライター
Ernest Gold
収録アルバム
Exodus (OST)
リリース年
1960年
他のヴァージョン
Connie Francis, Henry Mancini, Earl Grant, the Gene Rains Group, Les Baxter, Martin Denny, Ferrante & Teicher, the Mantovani Orchestra, Grant Green, the Duprees, the Tornados, the Lively Ones, the Originals
Exodusというタイトルのものは映画だけでも3本あり、楽曲、アルバムともなると、ボブ・マーリーのものをはじめ、山ほどあるようなので、まず、なにを指すのかを特定します。

ここで取り上げるのは、1960年製作、オットー・プレミンジャー監督、ポール・ニューマン主演の映画『栄光への脱出』のテーマ曲です。ほかのものには一切ふれないので、検索エンジンからまちがえて当家にたどり着いた方はここで閉じてください。まあ、冒頭にこう書いておけば、まちがえて開く方は僅少でしょう。


◆ タイトル・デザイン ◆◆
面倒な話をはじめる前に、やはりタイトル・シークェンスをご覧になっていただくほうがいいように思います。

タイトル

題名だけでは曲を思いだせなかった方も、なんだ、あの曲か、と思われたのではないでしょうか。昔は耳にタコができそうなほどあちこちで流れていたものです。

当家では、何度も「グラフィック・タイトルの60年代」と申し上げていますが、このシークェンスを製作したのは、そういう時代を現出させた張本人、ソール・バスその人です。バスはすごいタイトルをたくさんつくっているので、そのレベルからいうと、この『栄光への脱出』は平均点というあたりではないでしょうか。ユーモアの入り込む余地はなく、大作中の大作なので、なによりも格を重んじ、凝らずに、あっさりした絵柄にしたのでしょう。

80年代なかばに、彼の唯一の本編監督作品『フェイズIV 戦慄!昆虫パニック』をテレビで見ましたが、一面で満足、一面で不満でした。音楽がよかったという記憶はないので、なんともいえないところですが、見直すチャンスがあり、スコアにいいところがあれば、この映画も取り上げようと思っています。バスについてはいろいろあるのですが、今後、彼の手になるタイトルで飾られた映画をたくさん取り上げる予定なので、ここではこのあたりで切り上げることにします。

いや、ひとつだけ。ソール・バスがもっとも成功した分野は、ひょっとしたら映画ではなく、CIのほうで、以下のようなものをデザインしたことで知られています。この世界ではまさに「巨匠」です。


◆ イスラエル建国 ◆◆
思いだすのは高校の世界史の授業です。大学受験の観点からいうと、わたしが高校生のときは、戦後史は出題対象になりにくいということになっていました。第二次大戦後についてはこのへんだけ知っていればよろしい、といわれたのが、「バルフォア宣言」と「マクマホン書簡」。いまでもすらすらとこの固有名詞が出てくるのだから、教育というのは恐ろしいものです!

いや、高校の授業を蒸し返すつもりはないので、極端に単純化していえば、イギリスは戦争遂行の便宜のために、アラブ側にもいい顔をし、ユダヤ側にもいい顔をし、結果的にまったく矛盾する約束をしてしまったというのが、バルフォア宣言とマクマホン書簡です。戦後、この矛盾が顕在化し、ユダヤ人はイスラエル建国へと猛然と動きだし、アラブ側はアラブ側で、みずからの主権を確立しようと動きだす、という政治情勢が映画『栄光への脱出』の背景になっています。

1947年の国連によるパレスティナ分割案
聖書の昔にまでさかのぼってしまうトラブルなので、いまさらどちらが正しいなどといってもはじまらず、関係各国が半世紀以上にわたって努力をつづけているにもかかわらず、いまだにああいう状態がつづいているわけで、ここでわたしがパレスティナ問題についてなにか書くのは莫迦げています。だから、この記事では、政治的にはニュートラルということで通させていだきます。

映画は、1947年、キプロスのユダヤ難民キャンプからはじまります。ポール・ニューマン扮するユダヤ人武装地下組織ハガナのアリ・ベン・カナーンは、貨物船をチャーターして、ここに収容された難民のうち、600名あまりを脱出させ、彼らの本来の目的地だった、イギリスのパレスティナ委任統治領に連れていこうとします。

ところが、港の入口でこの貨物船(途中で「エクソダス」と船名を変更する)はブロックされ、ハンガー・ストライキに突入することになります。これは当時、大々的なニュースになった事件のようですが、わたしが生まれる以前のことではあるし、日本はまだ食うや食わず、はるか遠くの国のことになどまったく関心がなかったことでしょう。この「エクソダス」号に乗った難民の運命が前半の興味の中心で、これだけで一本分の時間が費やされます(トータルの上映時間は3時間半!)。

後半は、ハガナとは対立するユダヤ過激派地下組織イルグンの活動と、彼らに対するハガナ側の働きかけ、イギリス軍に捕らえられ、死刑を宣告されたイルグン指導者の救出作戦、そして、1947年11月29日の国連総会における「パレスティナ分割決議」をクライマクスとして、その後に起きるアラブ対ユダヤの内戦の発端をもって終わっています。

こういうエピックというのは作り方がむずかしいものなので、ここでは批判はせずにおきます。「アメリカの内なるユダヤ都市国家」であるハリウッドとしては、是が非でもつくらねばらない映画だったのでしょう。製作の裏側ではさまざまな政治的思惑が働いていたであろうことは想像にかたくありません。


◆ 家系連綿 ◆◆
この映画のテーマとスコアを書いたアーネスト・ゴールド(ウィーン生まれなので、エルネスト・ゴールトとするべきかもしれないが、成人したのはアメリカでのことなので、英語式表記で通す)は、名前は記憶していたものの、どんな映画のスコアを書いたのかは頭に入れていなかったので、調べてみたら、おやまあ、なんとねえ、でした。

ゴールドは1921年、ウィーンの裕福なユダヤ人家庭に生まれました。母方の祖父はブルックナーについて学び、後年、ブラームスが設立した音楽協会の代表に就任していますし、母は歌手、父はアマチュア・ヴァイオリニストでした。

ヒトラーとナチスの台頭により、ウィーンのユダヤ一家にはきびしい時代がはじまったため、1938年、ゴールド家はアメリカに移住することになります(ゴールドより年長で、すでにウィーン音楽界で名をなしていたエーリッヒ・コルンゴールトも、ゴールドより先にハリウッドにたどり着く。考えてみると、コルンゴールトも、「エリック・コーンゴールド」と書くべきか?)。十代のうちからアーネストはピアニスト、作曲家としての活動をはじめますが、当時の批評家には受けが悪く、映画音楽のように俗っぽいと批判されました。

(脇道にそれるが、ユダヤ人はアメリカでも「エクソダス」をしている。ハリウッドは東部に居づらくなったユダヤ系映画人が西部へと脱出を試みた結果生まれた町なのである。この『出エジプト記2』別題『出ニューヨーク記』はいまからちょうど一世紀前を舞台にしている。この第二の脱出に関するエピックは未だにつくられていない。第2次大戦戦前戦中に、芸術関係のユダヤ難民がハリウッドを目指したのは、あそこが「アメリカのなかのイスラエル」だからではないだろうか?)

ニール・ギャブラー著『彼らだけの帝国――ユダヤ人はいかにしてハリウッドを発明したか』 非常に面白い本で、ハリウッドのなんたるかを理解するうえで益するところ大。
もともと映画音楽を好んでいたゴールドはハリウッドに移り、低予算映画の音楽を書きはじめます(そういう仕事の一例がこの記事で取り上げられている。サンプル音源つき)。スタンリー・クレイマーの『手錠のまゝの脱獄』(1958年、トニー・カーティス、シドニー・ポアティエ主演)のスコアを任されたあたりから運が開けはじめ、『栄光への脱出』でキャリアのピークを迎えます。

『手錠のまゝの脱獄』(1959年、スタンリー・クレイマー監督)
ふつう、音楽監督は撮影が終わってからプロジェクトにかかわるものですが、『栄光への脱出』では、ゴールドはプリプロダクション段階から参加し、完了までほぼ一年をかけてこのスコアを書いていったそうです。どれほどの大作だったかわかろうというものです。

いや、それはいいのですが、キャリアを読んでみたら、ああ、それでゴールドの名前をはっきり覚えていたのか、という記述がありました。ゴールドはマーニー・ニクソンの夫だったことがあるのだそうです。先般、『マイ・フェア・レディ』を取り上げたときにマーニー・ニクソンのことを調べ、その記事にゴールドのことが出ていたので、まだ名前を覚えていたのだとわかりました。

しかし、今回はもうひとつ知りました。アーネスト・ゴールドとマーニー・ニクソンのあいだには子どもが三人生まれたそうです。そしてそのひとりが、アンドルー・ゴールドだというのだから、ありゃありゃ、でした。クラシックやオーケストラの系統でつながっているならまだしも、ロック系までいってしまうとは、またなんとも生命力旺盛な音楽系統樹です。

あれこれと調べものばかりで、力を使い果たしてしまったので、カヴァー盤などについては次回送りにさせていただきます。

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