FC2ブログ

60年代の輪郭 〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉カヴァー・ヴァージョン ギター・インスト篇(『ドクター・ノオ』より)

2009-07-28

曲名
ジェイムズ・ボンド・テーマ(The James Bond Theme)
アーティスト
ビリー・ストレンジ(Billy Strange)
収録アルバム
『ジェイムズ・ボンド・テーマ/ウォーク・ドント・ラン'64』(James Bond Theme/Walk Don't Run '64)
作曲者
モンティー・ノーマン(Monty Norman)
音楽監督
モンティー・ノーマン(Monty Norman)
監督
テレンス・ヤング(Terence Young)
リリース年
1962年
billy strange - james bond theme and walk don't run 64


ジェイムズ・ボンド・シリーズが軌道に乗ったのは『ゴールドフィンガー』の大ヒットのおかげですが、音楽のほうでも、第三作公開後に、過去の曲までさかのぼって、多数のカヴァーが生まれます。

第一作公開直後のものはほとんどありませんが、〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉のカヴァーは、その後のブームのときに生まれたものが、とほうに暮れるほどたくさんあります。どこまで追いかけられるかわかりませんが、できるだけ多くのヴァージョンを俎上に載せてみます。

dr no title

☆著作権トラブルとセッション・プレイヤー☆

オリジナルのOSTヴァージョンについては、すでにべつのところで、音楽的な細かい検討をしているので、そういう側面に関心がおありの方は以下をご覧ください。

Songs for 4 SeasonsブログのThe James Bond Themeエントリーを読む

上記の記事を書いたときに調べきれていなかったことをまとめておきます。まず、ジョン・バリーは二度にわたって、〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉の著作権を主張する訴訟を起こしているそうですが、結局、いまのところはモンティー・ノーマンが唯一の作者であるとクレジットされたままです。

若く、影響力のない人間が、実績のある人間にクレジットを独り占めされてしまうのはよくあることで、バリーの主張は根拠のないものではないだろうと想像しますが、しかし、こういうことはいわば業界慣行だから、一面でやむをえないとも感じます。この仕事によってバリーは存在感を示すわけで、トータルで見れば、利益はあったのだと考えるしかないでしょう。

〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉という曲でもっとも重要な要素は、ギターのトーンです。あの印象的なトーンのことがずっと気にかかっていたのですが、だれがどういう機材でつくったか、やっとわかりました。

プレイヤーの名前はヴィック・フリック。ジョン・バリーのコンボ「ジョン・バリー・セヴン」でギターを弾いていた関係で、バリーがコンダクトした『ドクター・ノオ』のセッションに参加することになったようです。

john barry 7

このギターから連想するのは、当然、ドゥエイン・エディーのいわゆる「トワンギー・ギター」ですが、エディーが主としてグレッチを弾いたのに対して、フリックは「『クリフォード・エセクス・パラゴン』にディアモンドのピックアップをつけ、ヴォックスの15ワット・アンプに通した」といっているそうです。ヴォックス以外は一般的ではない楽器、機材で、このへんがイギリスのプレイヤーらしいところです。

フリックの仕事としてはほかに、ビートルズの映画『ア・ハード・デイズ・ナイト』に出てくるインスト曲、〈リンゴのテーマ〉(Ringo's Theme)のリードギターがよく知られています。たしかに同じ系統のギター・サウンドです。

☆ビリー・ストレンジ☆


〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉には多数のカヴァーがありますが、大ざっぱに3種類に分けられます。ギター・インスト、オーケストラもの、そしてジャズ寄りのスモール・コンボおよびビッグバンドものです。〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉の最大の特徴はギターの使い方なので、まずはギター・インストから見ていきます。

数ある〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉のなかで、ビルボードにチャートインしたヴァージョンはたったひとつしかありません。ビリー・ストレンジ盤のみが、1964年に58位までいっているのです。『ゴールドフィンガー』の大ヒットを受けて、タイミングよくリリースしたということもあるのでしょうが、すぐれたアレンジ、サウンド、プレイで、ヒットしたのも当然だと感じます。

ビリー・ストレンジの〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉の最大の美点は、ハル・ブレインの力強いドラム・ビートだと感じます。この曲では、ドラムをダブル・トラックにして、左右両方のチャンネルに、わずかに強弱の差をつけて音像を配するという細かい工夫がされています。

ビリー・ストレンジの〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉はさまざまな編集盤に収録されていますが、もともとのオリジナル・アルバムである"The James Bond Theme/Walk, Don't Run, '64"が最近になってようやく再発されました。

billy strange - james bond theme
Billy Strange "The James Bond Theme/Walk, Don't Run '64"
01. The James Bond Theme
02. Nobody I Know
03. In the Mood
04. Memphis
05. Wishin and Hopin
06. C'mon and Swim
07. Walk, Don't Run '64
08. The Girl from Ipanema
09. Hard Day's Night
10. Bernie's Tune
11. 007 Theme
12. House of the Rising Sun

ご覧のように、とくにジェイムズ・ボンド関係を集めたものではなく、同時代のヒット曲を中心に、スタンダード曲もまじえた構成になっています。ビリー・ストレンジにはスパイ・ミュージックを集めた編集盤もありますが、そちらは今後のジェイムズ・ボンド・シリーズの記事でご紹介します。

☆エキゾティック・ギターズ☆


エキゾティック・ギターズというスタジオ・プロジェクトは、「ギター・コンボによるラウンジ・ミュージック」ないしは「エレクトリック・ギターによるエキゾティカ」を目指したものなのだということは、プロジェクト名とじっさいのサウンドを聴けばわかります。

ラウンジ・ミュージックというのは、精神の弛緩を目的としているので、強い音、とがった音、緊張感のあるプレイというのはしないものです。他のものと同じ平面で比較してしまうと、エキゾティック・ギターズの〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉は間延びしているように感じることでしょう。この緩さは意図されたものなのです。

エキゾティック・ギターズの〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉の面白いところは、冒頭では、あのリックをエレクトリックで弾いているのですが、中間のインプロヴにはアコースティックを使っていることです。なんとか新味を出したいという苦肉の策なのでしょう、フルートの利用と合わせて、耳を惹きつける要素になっています。

exotic guitars - sonic lounge
The Exotic Guitars "Sonic Lounge"
01. Sabre Dance
02. Third Man Theme
03. Smoke Gets in Your Eyes
04. Man and a Woman, A
05. Exotic Guitar Boogie
06. Melody of Love
07. La Paloma
08. James Bond Theme
09. Blue Velvet
10. Autumn Leaves
11. Indian Love Call
12. Harbor Lights
13. Shadow of Your Smile, The
14. Heartaches
15. C'Est Si Bon
16. Theme From Love Story
17. Blue Tango
18. Who's Sorry Now
19. Blueberry Hill
20. Moon River

☆グレン・キャンベル☆


グレン・キャンベル(Glen Campbell)は、〈恋はフェニックス〉(By the Time I Get to Phoenix)や〈ウィチタ・ラインマン〉(Wichita Lineman)といった、ジミー・ウェブ作品のヒットでスターになる以前に、すでに長いキャリアがあり、その雌伏期を主としてセッション・ギタリストとしてすごしました。

もちろん、スターのほうがずっと儲かるにちがいありませんが、スタジオ・ギタリストとしてのグレン・キャンベルも、ビーチボーイズやヴェンチャーズをはじめ、無数のアーティストの録音でギターを弾き、業界ではそれと知られたプレイヤーで、おおいに売れていました。

60年代なかばまではインストもビジネスになったので、有名なスタジオ・プレイヤーのほとんどが自己名義のアルバムを出しています。グレン・キャンベルの場合は、シンガーとしてのリリースもありますが、この〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉を収録した『ザ・ビッグ・バッド・ロック・ギター・オヴ・グレン・キャンベル』("The Big Bad Rock Guitar Of Glen Campbell")は、ビッグ・バンドをバックにしたギター・インスト・アルバムです。

james bond with a gun

60年代のハリウッドはアメリカ最大の「音楽工場」だったため、とてつもない数の盤をリリースしていますが、そうしたセッションには同じプレイヤーが顔を出していることがしばしばあり、この〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉についても奇妙なことになっています。

このグレン・キャンベルのアルバムのアレンジとコンダクトはビリー・ストレンジがやっていますし、ドラムもビリー・ストレンジ盤と同じハル・ブレインのため、全体としてのサウンドはビリー・ストレンジの〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉に雰囲気が似ているのです(ついでにいえば、エキゾティック・ギターズもハリウッド録音で、ビリー・ストレンジやグレン・キャンベルのヴァージョンとメンバーの一部は重複していると思われる)。

そのへんを意識したのか、グレン・キャンベルは12弦ギターを使うことで、他のヴァージョン、とりわけビリー・ストレンジ盤との差別化を図っています。その12弦ギターもリッケンバッカーではないようで(グレン・キャンベルはモズライトやオベイジョンの12弦も使ったことがわかっている)、独特のサウンドになっています。

the big bad rock guitar of glen campbell
Glen Campbell "The Big Bad Rock Guitar Of Glen Campbell"
01.Walk, Don't Run
02.Ticket To Ride
03.Steve's Shuck
04.Spanish Shades
05.The Lone Arranger
06.James Bond Theme
07.It's Not Unusual
08.King Of The Road
09.Sassy
10.Mr. Tambourine Man
11.Spring Mist
12.Beef Jerky

☆ジョニー&ザ・ハリケーンズ☆


〈レッド・リヴァー・ロック〉(Red River Rock)のヒットで知られるオハイオ出身のロック・インストゥルメンタル・コンボ、ジョニー&ザ・ハリケーンズ(Johnny & the Hurricanes)の〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉は、ハリウッドのエース・プレイヤーたちの録音のように洗練されたものではありませんが、これはこれで魅力があります。

オフィシャル・サイトのディスコグラフィーによると(わたしが読みまちがえたのでなければ)これは1963年に45回転盤としてリリースされたようで、〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉のカヴァーとしてはもっとも早いもののひとつです。

まだこの曲が有名になる以前だからなのでしょう、メロディーもコードもかなり崩していて、途中から〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉だということを忘れてしまいそうになります。あの有名な低音弦のリックまでラインを変えて弾いているので、いまになると違和感があるほどです。

しかし、最初の違和感を乗り越えれば、これはこれで悪くないヴァージョンだと感じます。ラインはずいぶん異なりますが、転調も効果的で、スパイ・ミュージックらしい気分がたっぷりあり、なかなか楽しい出来だと思います。

the very best of johnny and the hurricanes

The Very Best of Johnny & The Hurricanes
1. Reveille Rock
2. Bye Bye Blackbird
3. Hungry Eye
4. Beatnik Fly
5. Miserlou
6. James Bond Theme
7. Buckeye
8. Sand Storm
9. Red River Rock
10. Bean Bag
11. Walkin'
12. You Are My Sunshine
13. Storm Warning
14. Down Yonder
15. Time Bomb
16. Rocking Goose
17. Like Rock
18. Sheik of Araby
19. Cross Fire
20. Sheba

以上で〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉カヴァーのギター・インストものは終わり、つぎはオーケストラものを一覧します。

スポンサーサイト



テーマ : 60年代の輪郭
ジャンル : 映画

トラックバック

コメントの投稿

非公開コメント

最新記事
プロフィール

songsformovies

Author:songsformovies
黄金光音堂へようこそ!

counter
RSSリンクの表示
カレンダー
12 | 2020/01 | 02
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
カテゴリ
検索フォーム
最新コメント
月別アーカイブ
最新トラックバック
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
リンク