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60年代の輪郭 キングストン・カリプソ(『ドクター・ノオ』より)

2009-07-26

タイトル
キングストン・カリプソ(Kingston Calypso)
アーティスト
バイロン・リー&ザ・ドラゴネアーズ(Byron Lee and the Dragonaires)
収録アルバム
『ドクター・ノオ』(Dr. No OST)
作曲者
モンティー・ノーマン(Monty Norman)
音楽監督
モンティー・ノーマン(Monty Norman)
監督
テレンス・ヤング(Terence Young)
リリース年
1962年
Dr. No OST front cover


☆007カリプソ?☆


いまになって改めて『ドクター・ノオ』を再見し、そしてそのサウンドトラック・アルバムを聴いて驚くのは、オーケストラによるスコアは僅少で、舞台となったジャマイカの音楽が目だつことです。OST盤を聴いていると、ジェイムズ・ボンド映画の音楽には思えないほどです。



〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉のあとに、つなぎのコンガ・ビートがあり、そして〈キングストン・カリプソ〉へと移るという、かなり不自然な三段構えのオープニングですが、この〈キングストン・カリプソ〉という、マザーグースのThree Blind Miceにもとづく曲も、なかなかわるくなくて、最初の違和感を乗り越えると、これは面白くなりそうだ、という気分になります。

じっさい、3人のニセ盲人による殺人のシークェンスは、リズミカルであると同時にユーモラスであり、それでいながら、やることは殺人、しかもじつに事務的な殺し、という対比があざやかで、すぐれたシークェンスになっています。

3 blind mice 1
3 blind mice 2

この曲はバイロン・リー&ザ・ドラゴネアーズの歌と演奏ということになっていて、劇中のクラブのシークェンスで、このグループが歌うショットが出てきますが、じっさいに録音したのは、スカのパイオニアのひとり、ギタリストのアーネスト・ラングリンなのだそうです。ややこしいといえばややこしいのですが、看板と実態が異なるのは、音楽や映画の世界ではごくふつうのことです。

byron lee and the dragonaires

☆マンゴーの木の下で☆


この系統の曲としてもうひとつ目だつのは、〈アンダー・ザ・マンゴー・トゥリー〉(Under the Mango Tree)という曲です。

サウンドトラック盤には3種類の〈アンダー・ザ・マンゴー・トゥリー〉が収録されていますが、映画のなかに出てくる3ヴァージョンと一致するのは、モンティー・ノーマン夫人、ダイアナ・クープランドの歌うヴァージョンだけだと思います。これはボンドがドクター・ノオの手先の女の家で、暗殺者に罠を仕掛けるときに、ポータブル・プレイヤーでかかるレコードの音として登場します。

ダイアナ・クープランド・ヴァージョン


ちょっと〈バナナ・ボート・ソング〉を思わせる、のどかな雰囲気とグッド・フィーリンのある曲で、画面に南国らしさをあたえています。the mango treeだから、theの発音は「ザ」でいいはずですが、どのヴァージョンも「ディ」と発音していますし、YouTubeのクリップにも、Under di Mango Treeと書いているものもあります。ネイティヴではないわたしにはわかりませんが、そういう細部もジャマイカらしさを演出する要素なのでしょう。

ほかに、海岸のよしず張り(いや、よしずではなく、なにかべつの植物の茎だろうが!)のバーのシーンでも流れます。そして、アーシュラ・アンドレスが登場する島の浜辺のシーンでは彼女が歌い、それを物陰で聞いていたボンドが唱和するという形でも使われます。ほとんど非公式のテーマ・ソングといっていいほどです。

ハニー・ライダー&ジェイムズ・ボンド・ヴァージョン


こういう悪い環境で、同録でヴォーカルを録るとは思えないので、歌っているのもアーシュラ・アンドレスではなく、プロのシンガー、たとえば、前記のダイアナ・クープランドあたりではないでしょうか。

☆〈キングストン・カリプソ〉のカヴァー☆


第三作の『ゴールドフィンガー』が爆発的にヒットして以後、ジェイムズ・ボンドやその他のスパイ映画の音楽をカヴァーした企画盤が山ほどリリースされています。そうしたものの定番曲というのはあるのですが、差別化のために目だたない曲をカヴァーしているアーティストもいます。〈キングストン・カリプソ〉にも、〈アンダー・ザ・マンゴー・トゥリー〉にも、じつはちゃんとカヴァーがあるのです。

〈キングストン・カリプソ〉のカヴァーで、わたしが知っているのは、カウント・ベイシー盤だけです。

count basie - basie meets bond
Count Basie "Basie Meets Bond"
01. 007
02. The Golden Horn
03. Girl Trouble
04. Kingston Calypso
05. Goldfinger
06. Thunderball
07. From Russia With Love
08. Dr. No's Fantasy
09. Underneath The Mango Tree
10. The James Bond Theme
11. Dr. No's Fantasy (First Version)

このアルバムは良かったり悪かったり、まだら模様の出来ですが、〈キングストン・カリプソ〉は「良」のほうです。わたしとしては、こういう曲はもっと軽く仕上げるほうが好みに合いますが、客観的にいって、このホーン・アレンジは悪くないと思います。


☆〈アンダー・ザ・マンゴー・トゥリー〉のカヴァー☆


〈アンダー・ザ・マンゴー・トゥリー〉(ヴァージョンによって〈アンダーニース・ザ・マンゴー・トゥリー〉としているものもある。歌詞はUnderneathと歌っている)のカヴァーは3種類聴いたことがあります。

上記のリストでもおわかりのように、カウント・ベイシーはこの曲もカヴァーしています。相対的な比較の問題にすぎませんが、〈キングストン・カリプソ〉より、こちらはホーンが強く、その分、南国的ムードは稀薄ですし、ホーン・アンサンブルのフォルテシモはやや暑苦しく感じます。

パーカッション・プレイヤーのレイ・バレートーも『セニョール007』というジェイムズ・ボンド音楽カヴァー集で〈アンダー・ザ・マンゴー・トゥリー〉を取り上げています。

ray barretto - senor 007 lp
Ray Barretto "Senor 007"
01. Mister Kiss Kiss Bang Bang
02. Search for Vulcan
03. Jamaica Jump Up
04. Thunderball
05. From Russia with Love
06. I Wanna Be a James Bond Girl
07. 007 (Double O Seven)
08. Underneath the Mango Tree
09. The James Bond Theme
10. Goldfinger

ボンゴを中心としたラテン・パーカッションと、ピアノ、ベースによるアンサンブルの上に、少人数のストリングスによるメロディーラインを載せた冒頭のアレンジは、涼しげでさわやかなサウンドです。ブラス・セクションの出番がもっと少ないと、このムードがつづいてよかったのに、とは思いますが、総体としてはなかなか好ましい音といえます。

ウィーン生まれのヴァイオリニストで、イギリスに渡ってアレンジャー、オーケストラ・リーダーとして活躍したレイ・マーティンは、2枚の007もの企画盤を出していて、その一枚、『ゴールドフィンガー・アンド・アザー・ミュージック・フロム・ジェイムズ・ボンド・スリラーズ』というアルバムで、〈アンダー・ザ・マンゴー・トゥリー〉をカヴァーしています。

ray martin - goldfinger
Ray Martin & His Orchestra "Goldfinger and Other Music from James Bond Thrillers"
01. Goldfinger
02. The James Bond Theme
03. Under The Mango Tree
04. From Russia With Love
05. Bond's Lament
06. '007'
07. Girl Trouble
08. Honey's Theme
09. Jamaica Jump Up
10. Galore's Theme

レイ・マーティンのジェイムズ・ボンド・カヴァーは、どの曲もむやみに速いうえに、やたらに軽くて、もちろん意図したものにちがいありませんが、わたしの場合は、やや居心地悪く感じます。たとえばCMなどに使うのなら、こういうアレンジ、サウンドもいいだろうと思うのですが、盤としてはそのCM向きの性質がマイナスに働くように感じられます。

また、レイ・バレートーもレイ・マーティンもやっている、Jamaica Jump Upという曲も、『ドクター・ノオ』のクラブのシーンで「現実音」として使われている曲です。スカとかカリプソといったタイプではなく、ほとんどサンバのように速くてホットな曲で、これも魅力的ですが、手がまわらなくて省略しました。

次回は肝心の〈ジェイムズ・ボンド・テーマ〉の各種カヴァーを見ていきます。

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テーマ : 60年代の輪郭
ジャンル : 映画

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