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Q&Aソングス その3のB King of the Roadのカヴァー

2009-11-11

曲名
キング・オヴ・ザ・ロード(King of the Road)
アーティスト
ビリー・ストレンジ(Billy Strange)
収録アルバム
『キング・オヴ・ザ・ロード――ビリー・ストレンジ・プレイズ・ロジャー・ミラー』(King of the Road: Billy Strange Plays Roger Miller)
作曲者
ロジャー・ミラー(Roger Miller)
リリース年
196?年


前回、King of the Roadには数種のカヴァーがあると書いたので、今日は「アンサー・ソング」の文脈から離れて、King of the Roadのカヴァーを聴きます。ほとんどがインストゥルメンタルで、ヴォーカルものは一種のみです。


☆ ビリー・ストレンジ ☆


ビリー・ストレンジはその名もKing of the Road: Billy Strange Plays Roger Miller Hits!というアルバムで、この曲をカヴァーしています。Add More MusicでLPリップのMP3を聴けるので、ご興味のある方はあちらにいらしてみてください。

King of the Road: Billy Strange Plays Roger Miller Hits!

このレヴューでキムラさんがお書きになっているように、このアルバムは基本的にはアコースティック12弦によるギターインストですが、ときには歌ってみたり(ディズニーのテレビ・アニメで主題歌をうたったくらいの人なので、なかなか美声だし、うまい)、さらにうれしいことに、フェンダーを入れてみたりで、変化をつけています。

King of the Roadは、アコースティック12弦でスタートし、途中からフェンダーに持ち替えます。どちらのプレイも魅力的で、曰く言い難し。

lee, billy, nancy

lee, billy, nancy
ナンシー・シナトラとそのスタッフ、リー・ヘイズルウッドとビリー・ストレンジのナウ&ゼン。

アコースティック12弦というのはじつに「痛い楽器」で、そういうもので何枚もアルバムを出すとはすごいものだ、とビリー・ストレンジ親分に申し上げたことがあります。「12弦ギターのブームが終わったときはホッとした。いまでは一本残してあるだけで、もう家に置いてもいない。指もやわらかくなってしまったので、もう弾けないだろう」とおっしゃっていました。ビリー・ストレンジ御大ほどの手練れでも、やはり12弦ギターというのはつらい楽器なのだとわかって、こちらもなんだかホッとしました。

ドラムはハル・ブレインなのははっきりわかりますが、スタンダップ・ベースはだれでしょうか。なかなかけっこうなグルーヴです。

☆ グレン・キャンベル ☆


ビリー・ストレンジと同じく、ハリウッドのスタジオでセッション・プレイヤーをしていたグレン・キャンベルも、King of the Roadをギター・インストとして盤にしています。このアルバムもまた、Add More MusicでLPリップを聴けます。

The Big Bad Rock Guitar Of GLEN CAMPBELL(LPリップ)

1960年代のハリウッドのスタジオでは、一握りのプレイヤーたちがリズム・セクションを構成し、無数のセッションをこなしていました。そのプレイヤーたちのソロ・アルバムを並べたのだから、当然の結果なのですが、グレン・キャンベルのKing of the Roadは、ビリー・ストレンジのKing of the Roadと同じようなメンバーで録音されています。

glen campbell

なんといっても、The Big Bad Rock Guitar Of GLEN CAMPBELLのアレンジャーは、ほかならぬビリー・ストレンジその人なので、サウンド的に近いものになります。そのうえ、両方ともドラムはハル・ブレインなのだから、むしろ、似ないようにするのが大変だったでしょう。

しかし、タイトルにRock Guitarとあるわけで、グレン・キャンベルのほうは終始一貫、エレクトリックでのプレイで、長いインプロヴを聴くことができます。ハル・ブレインもこちらのほうが暴れています。

このアルバムでは、アレンジャーのビリー・ストレンジ御大が、みずからフェンダーをもってセカンド・リードを弾いた曲があります。King of the Roadも、右チャンネルのエレクトリックはそうなのかもしれません。


☆ バーバンク・フィルハーモニック ☆


バーバンク・フィルハーモニックなどというバンドをご存知の方はまずいないでしょう。おそらく一枚しか盤を残さなかったプロジェクトで、スナッフ・ギャレットの会社が企画したものです(プロデューサーはギャレットではなく、ワイルダー兄弟とクレジットされている)。

現代(60年代後半)の曲を、大昔のバー・バンドのスタイルでやってみようというアイディアなのでしょう。4ビートとマーチの中間のような、よくいえばニューオーリンズ的なサウンドを聴けます。

burbank philharmonic

意図したわけではないのですが、たまたまこのアルバムのドラマーもハル・ブレインです。スナッフ・ギャレットのプロジェクトだから、イヤでもそうなってしまうのです。また、ジャケット・デザインはディーン・トーレンスのキティーホーク・グラフィックスです(出来は「うーん」だが!)。

ほかのトラックでは、楽曲とサウンドの衝突ぶりに思わず笑ってしまったりしますが、この曲は良くもなく悪くもない出来です。


☆ ジェリー・マリガン ☆


いくぶん不似合いに感じるのですが、なぜかジェリー・マリガンもこの曲をカヴァーしています。If You Can't Beat 'Em, Join 'Em、奴らを打ち負かせないなら、仲間になっちゃおう、というタイトルのアルバムで、King Of The Road、Engine, Engine No.9、Hush, Hush Sweet Charlotte、I Know A Place、Can't Buy Me Love、A Hard Day's Night、If I Fell、Downtown、Mr. Tambourine Manといったポップ/ロック系の曲をカヴァーしています。

メンバーとしては、ハル・ブレインがやや場違いに感じられるだけで、スタンダップ・ベースのジミー・ボンドとピアノのピート・ジョリーは、ポップ・セッションで活躍していたものの、ジャズ・プロパーのプレイヤーという意識は失っていなかったでしょう。したがって、ストレートなジャズ・フィールでプレイしています。

gerry mulliga, hal blaine, jimmy bond, pete jolly
左からジェリー・マリガン、ハル・ブレイン、ジミー・ボンド、ピート・ジョリー

ハル・ブレインもビッグバンドにルーツのあるプレイヤーなので、タイムがジャズ的にルースではなく、きっちりやっていることをのぞけば、とくにロック寄りのプレイはしていません。

いま聴けば、楽曲はべつとして、サウンドとしては保守的な音です。この時代には、ジャズ・プレイヤーがこういう楽曲を取り上げるのは、物議を醸したかもしれませんが。せっかくハル・ブレインがいるのだから、思いきってサウンドもjoin'emすれば、後年、ターニング・ポイントとなったアルバムといった評価が得られたかもしれず、惜しいことをしたと思います。ハル・ブレイン・ファンとしては、彼の4ビートのプレイを確認し、8ビートのときほどすごくない、借りてきた猫みたいだ、という洞察を得られるので、それなりに収穫のあるアルバムですけれどね。



ジェリー・マリガン If You Can't Beat 'Em, Join 'Em
イフ・ユー・キャント・ビート・エム・ジョイン・エム
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☆ ディーン・マーティン ☆


どん尻に控えしは、わが家にある唯一の歌ものKing of the Roadカヴァー、ディーン・マーティン盤です。

またハル・ブレインかって? たぶん、そうでしょう。クレジットはないし、ブラシなのでプレイからの判断も困難ですが、状況から、ハルだろうと推測できます。どういう状況か?

1964年、ディーン・マーティンは、まだリプリーズに入社して間もない若いプロデューサー、ジミー・ボーウェンのプロデュースで、彼の「手駒」といえるアーニー・フリーマンのアレンジ、ハル・ブレインの力強いドラミングによって、Everybody Loves Somebodyのナンバーワン・ヒットを得ます。この一曲で、スターの座を滑り落ちかけていたディノは一挙に頽勢を挽回し、以前にも増してビッグネームになります。


スタジオ録音ではありませんが、テレビのディーン・マーティン・ショウで、ディノとロジャー・ミラーがいっしょにKing of the Roadを歌ったクリップがありました。それにしても、よく子猫たちがおとなしくしていたものです。精神安定剤でも飲まされた?

こういうとき、フォーマットは変えないのが常識です。じっさい、このあとのディノの録音を追うと、そこらじゅうでハル・ブレインのタムタムが聞こえます。King of the Roadは1965年のアルバム、Remenber Meに収録されました。このアルバムのプロデューサーはいつものようにジミー・ボーウェン、アレンジャーもいつものようにアーニー・フリーマン、ドラムだけがハル・ブレインではないと推測する根拠はありません。

ということで、完璧に証明できたとはいいませんが、今回のKing of the Roadカヴァー集は、不思議なことにすべてハル・ブレインのドラミングだったというのがサゲです。あ、ディノの歌はいつ聴いても楽しいですよ。この曲も彼に向いています。

ディーン・マーティン Everybody Loves Somebody: Reprise Years

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テーマ : 60年代の輪郭(音楽)
ジャンル : 音楽

エリー・グリニッチ追悼 その3 アンドルー・ゴールド“ドゥー・ワー・ディディ”(Doo Wah Diddy-Diddy by Andrew Gold)

2009-09-17

曲名
“ドゥー・ワー・ディディ”(Doo Wah Diddy-Diddy)
アーティスト
アンドルー・ゴールド(Andrew Gold)
収録アルバム
『ホワッツ・ロング・ウィズ・ディス・ピクチャー?』(What's Wring with This Picture?)
作曲者
ジェフ・バリー、エリー・グリニッチ(Jeff Barry, Ellie Greenich)
リリース年
1977年
andrew gold


ジェフ・バリーとエリー・グリニッチというのは、循環コードの使い方で勝負したソングライター・チームで、代表作を並べてみると、おやおやと思います。

根本にはI-IVパターンがあり、このすぐ下の兄弟のような位置にI-IV-Vパターン、つまり3コードのいわゆるトゥイスト・アンド・シャウト進行があって、どちらももちろん他のソングライターチームも多用したのですが、とりわけバリー=グリニッチは、すべての曲がこのパターンのヴァリエーションであると断言したくなってしまうほどです。

jeff barry and ellie greenwich

もちろん、メイジャーの3コードばかりでなく、マイナーをまじえた花はどこへ行った4コード・パターン、ザ・ウェイト4コード・パターン(C-Em-F-G7)とそのヴァリエーションもあります。われわれが漠然と循環コードといっているものはすべて使っているにちがいありません。

以上は主としてヴァースのみに関するローカルなパターンですが、もっと広げて曲全体の流れでいっても、たとえば、ヴァースはC-F-G、ブリッジはEm-Am-Dm-Gというような、メイジャーとマイナーのコンビネーションによるパターンも、C-F-Gに劣らぬほど多用した組み合わせです。バリー=グリニッチとは、よかれ悪しかれ、パターン・ソングライティングのチームだったといっていいでしょう。

誤解しないでいただきたいのですが、パターン・ソングライティングはダメだ、といっているわけではないのです。理解の基盤として、そういう事実を見据えるべきである、といっているだけです。

☆ マンフレッド・マン・ヴァージョン☆


本日の「ドゥー・ワー・ディディ」もまた、メイジャーのヴァースと、マイナーが勝ったブリッジを組み合わせた、これぞポップ・チューンというパターンであり、伝統音楽やジャズではぜったいに味わえないたぐいの、力強さとささやかな叙情性が融合したタイプの曲です。

「ドゥー・ワー・ディディ」といえばマンフレッド・マンということになっているようなので、まずは彼らのヴァージョンからいきます。

わたしは、この時期のマンフレッド・マンのリード・ヴォーカル、ポール・ジョーンズの声と歌い方は、子どものころから好きでした。ちょっとパセティックな曲が合うタイプの声なのですが(映画『傷だらけのアイドル』の挿入曲、Free Meなんかピッタリだった)、そういう声と、この曲のハード・ドライヴィングなヴァースはいい対比を成していますし、マイナーにいくブリッジでは、ポール・ジョーンズならではの味があります。

paul jones privilage lp front
ポール・ジョーンズが映画『傷だらけのアイドル』(Privilege)で歌ったFree Meは印象深い。日本では沢田研二が手錠をはめるフリまで含めて丸ごとカヴァーした。いや、鉄格子は使わなかったか?

コンボ・オルガンのサウンドもあの時代らしいし、ドラムとベースのグルーヴもまずまずで、これでヒットしなかったらこの世は闇というぐらいに、シングル盤のつくり方の基本をきちんと押さえたプロダクションになっています。いまだにこの曲の決定版と見なされているのは当然です。

なお、わが家にあるマンフレッド・マンのベスト盤には、unedited ver.というものが収録されています。そういうものが気になる方もいらっしゃるでしょうが、これがリリースされなかったのは当然で、たんなる出来損ないにすぎません。編集済みの完成品だけあれば十分です。

マン・メイド・ヒッツ・プラス(紙ジャケット仕様)
マン・メイド・ヒッツ・プラス(紙ジャケット仕様)

この盤には「ドゥー・ワー・ディディ」のロング・ヴァージョンとやらも入っているそうですが、オマケはどこまでいってもオマケ、それ以上のものではありません。


At Abbey Road 1963-1966
At Abbey Road 1963-1966
ベスト・コンピレーションとしては、こちらのほうが正統的で信頼できます。マンフレッド・マン・エディションにかぎらず、このAt Abbey Roadシリーズはいずれもマスタリングがすばらしく(たとえばホリーズの2枚、シャドウズ、スウィンギング・ブルー・ジーンズなど)、「定本を残す」というEMIの意気込みが伝わってきます。

たんなるついでですが、ポール・ジョーンズは今年、新しい盤をリリースしました。わたしはまだ聴いていませんが、どんなものでしょうね。プロデューサーのバリー・ゴールドバーグはあのキーボード・プレイヤーでしょう。ドラムのエド・グリーンも、ジャクソン5、ジョニー・リヴァーズ、グラス・ルーツなどで叩いたあのスタジオ・ドラマーでしょうね、たぶん。ポール・ジョーンズの年齢に合わせたヴェテラン集団!

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☆ アンドルー・ゴールド ☆


エリー・グリニッチのオフィシャル・サイトの楽曲/アーティスト一覧にすら名前が挙がっていないのですが、アンドルー・ゴールドはこの曲を1977年のアルバム『ホワッツ・ロング・ウィズ・ディス・ピクチャー』(What's Wrong with This Picture)でカヴァーしています。これはマンフレッド・マン盤に比肩するヴァージョンだとわたしは考えます。

アンドルー・ゴールドは、リンダ・ロンシュタットのセッションで、ギター、ピアノ、ドラムなどをプレイして、八面六臂の活躍をしたことで世に知られたプレイヤーですが、とりわけ、ギター・ソロのアレンジに関しては、史上最高のひとりといっていいでしょう。

andrew gold

プレイの「腕力」より、構成力にひいでた人で、印象深いソロがたくさんあります。思いつきのフレーズを力任せに弾くことはなく、アイディアをよく練って発展させ、きれいなピッキングとていねいな録音で仕上げる、というタイプです。とりわけ、ギターの重ね方のうまさでは、ヴェンチャーズ(たとえばLolita Ya Ya)やトッド・ラングレン(Love of a Common Man)にくらべても遜色ありません。

アンドルー・ゴールドの「ドゥー・ワー・ディディ」の魅力は、やはりギターのアレンジメント、配置、サウンド、音のレイヤーの重ね方などで、すべてギターがらみです。とくに間奏は、音色の選択とレイヤーがみごとで、一瞬で終わってしまうのが残念でなりません。

アンドルー・ゴールドの父親が『栄光への脱出』をはじめ、数々の映画音楽をつくったアーネスト・ゴールドであり、母親が、『サウンド・オヴ・ミュージック』で尼僧を演じたことをはじめ、映画音楽をたくさんやったスタジオ・シンガーのマーニー・ニクソン(ほんの一例を挙げれば、マリリン・モンローやオードリー・ヘップバーンのスタンドインをやった)だということを、ほんの数カ月前、Songsf for 4 Seasonsブログのほうで『栄光への脱出』を取り上げたときに知りました。

earnest gold
アンドルー・ゴールドの父親、アーネスト・ゴールドは、『栄光への脱出』(Exodus)の音楽でオスカーを得た。

marnie nixon
アンドルー・ゴールドの母親、マーニー・ニクソン(中央)はさまざまな女優のスタンドインとして、数多くの映画で歌った有名なスタジオ・シンガー。写真は『サウンド・オヴ・ミュージック』出演時のもの。

あまり表に出なかった両親のキャリアと同じく、アンドルーも、リンダ・ロンシュタットのスタッフとして知られましたが、幸い、ソロでLonely BoyとThank You for Being My Friendのヒットを生んでいます。残念ながら、父親のように、ビルボード・チャート・トッパーとなり、無数のカヴァーが生まれ、スタンダードになるような曲は書けずに終わりそうですが。



What's Wrong with This Picture?

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検索で引っかかるように、一般的なアンドリュー・ゴールドという表記も書いておきます。わたしはこういう発音はしませんが。アンドルーズ空軍基地と同じように、Andrew GoldやAndrews Sistersも古代表記は廃止して、現代表記で統一してもらいたいものです。

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ジャンル : 音楽

エリー・グリニッチ追悼 その2 レスリー・ゴア“ルック・オヴ・ラヴ”(Look of Love by Lesley Gore)

2009-09-10

曲名
ルック・オヴ・ラヴ(Look of Love)
アーティスト
レスリー・ゴア(Lesley Gore)
収録アルバム
『ゴールデン・ヒッツ・オヴ・レスリー・ゴア』(The Golden Hits of Lesley Gore)
作曲者
ジェフ・バリー、エリー・グリニッチ(Jeff Barry, Ellie Greenich)
リリース年
1964年
the best of the ronettes


レスリー・ゴアはジェフ・バリー=エリー・グリニッチのものを2曲ヒットさせています。ひとつは彼女の代表作にカウントしていいであろう「ルック・オヴ・ラヴ」(Look of Love)、もうひとつは「メイビー・アイ・ノウ」(Maybe I Know)です。

「ルック・オヴ・ラヴ」(Look of Love)といっても、ライターがちがうのでおわかりでしょうが、バカラック=デイヴィッド作の、映画『カジノ・ロワイヤル』のテーマとは同名異曲です。

☆ Look of Loveオリジナル☆


この時期のレスリー・ゴアはニューヨーク(とりわけベル・サウンドとA&Rレコーディング)で、クラウス・オーゲルマンのアレンジ、クウィンシー・ジョーンズのプロデュースで録音していました。

It's My PartyやJudy's Turnといったデビュー時のヒット曲でドラム・ストゥールに坐ったのは、ゲーリー・チェスターであることがわかっていますが、Look of Loveのあたりはどうでしょうか。チェスターかもしれませんし、バディー・サルツマンやバーナード・パーディーあたりかもしれませんが、いずれにしても、地味ながら文句なしに素晴らしいグルーヴをつくっています。

イントロの尻尾、ヴァースに入る直前に、タムタムのアクセントを使っていますが、チューニング、サウンド、タイミング、すべて完璧で、惚れ惚れする一打になっています。また、1:06あたり、ヴァースからブリッジにつなぐフィルインでは、スネアのあいだにハイハットを一打だけはさむ、ややハイブロウなプレイもしていて、ほほう、です。

また、このブリッジの出口、ヴァースに戻る直前の四分三連をふくむタムタムによる四打も、完璧なチューニングの助けもあって、当たり前のフィルなのに、素晴らしいと拍手したくなります。

楽曲だけでは絶賛するほどの出来ではないかもしれませんが、レスリー・ゴア=クラウス・オーゲルマン=クウィンシー・ジョーンズ、そして、氏名未詳のドラマーのチームは、見事なレンディションをしています。さびしくもなく、ゴチャゴチャとうるさくもなく、ちょうどよいサウンドというのは、できそうでできないものです。

The Golden Hits of Lesley Gore
Lesley Gore
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☆ レスリー・ゴア自身のヴァリアント ☆


どういうわけか、ミディアム・シャッフル・ビートの曲にスレイ・ベルを入れると、突然、クリスマス・ソングのムードが横溢します。この原理に、会社のだれかが目をつけたのでしょう。レスリー・ゴアの「ルック・オフ・ラヴ」には、スレイ・ベルやティンパニーなどをオーヴァーダブした、クリスマス・ミックスがあります。

正直にいって、このような変則的なオーヴァーダブはきれいなものではないし、「いい処理」でもないと思います。でも、どういうわけか、たぶん、ティンパニーのせいだと思うのですが、このエディションは昔から好きで、『イッツ・マイ・パーティー』(It's My Party)という、ベア・ファミリーの5枚組ボックスに大枚をはたいても満足できた理由のひとつは、このトラックが収録されていたことです。

珍品にすぎないといってしまえばそれまでですが、レスリー・ゴア・ファンをつかまえては、「このエディションを聴いたことある?」と昔から押し売りをしています! ひとつだけ残念なのは、オーヴァーダブのせいで、ドラム、とくにハイハットをはさんだハイテクニックのフィルインが聞こえなくなってしまったことです。まあ、それはオリジナル・ミックスで聴けばいいことです。

このクリスマス・ミックスがあるだけで、「ルック・オヴ・ラヴ」(Look of Love)には、わたしが知るかぎり、他のアーティストによるカヴァーはないようです。

It's My Party!
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Lesley Gore
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☆ もう一曲のヒット、「メイビー・アイ・ノウ」 ☆


上述のように、レスリー・ゴアは、もう一曲、バリー=グリニッチの曲をヒットさせています。その「メイビー・アイ・ノウ」(Maybe I Know)は、「ルック・オヴ・ラヴ」と同じ1964年7月のセッションで録音されました。したがって、ドラムはタイム、タムタムのチューニングから明らかに「ルック・オヴ・ラヴ」と同じプレイヤーであることがわかりますし、独特のごく薄い管のミックスの仕方も「ルック・オヴ・ラヴ」と同じです。

曲はどうかというと、これまた、なんとなく「ルック・オヴ・ラヴ」に似ていて(リズム・アレンジもやはりミディアム・シャッフル)、二匹目のドジョウという感じですが、じっさいには、「メイビー・アイ・ノウ」(Maybe I Know)のほうが先にリリースされ、ビルボード14位のヒットになっています。「ルック・オヴ・ラヴ」(Look of Love)のほうは27位なので、当時の評価は「メイビー・アイ・ノウ」のほうがよく、「ルック・オヴ・ラヴ」は二番煎じと見られたようです。

わたしは、曲の出来も、レスリーのレンディションも、「ルック・オヴ・ラヴ」のほうがいいと思いますが、「メイビー・アイ・ノウ」がダメということはなく、こちらも好きです。たんに二者を比較するなら、「ルック・オヴ・ラヴ」のほうが好みであるというにすぎません。「メイビー・アイ・ノウ」のほうが、ドラムをいくぶん前に出すミックスで、タムタムのハード・ヒットが楽しめます。

It's My Party: The Mercury Anthology
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☆ エリー・グリニッジ自身のセルフ・カヴァー ☆


Maybe I Knowには、エリー・グリニッチ自身によるセルフ・カヴァー・ヴァージョンがあります。うーん、イントロの雰囲気は悪くないし、ヴァースに入ってからも、しばらくは楽しめるのですが、ブリッジのあたりから、どうもイヤな方向へとリズム・アレンジがねじれていきます。というか、このドラマー、タイムは悪くないものの、センスは大嫌いで、どうしてそういうフィルインを入れるんだよ、と額に青筋が立ちます。ニューヨークの堕落が明白に表出したグルーヴ。

とはいえ、エリー・グリニッチ自身はべつになにも悪いことをしていません。しいていうなら、こういうリズム・セクションをつくるコントラクターの仕事ぶりを容認した罪の一半はあるかもしれませんが。でも、それだって、時代が悪かっただけともいえます。70年代以降のニューヨークのスタジオは無惨ですからね。

だから、ダサダサなドラムとベースを無視できる人は、そこそこ楽しめるでしょう。

エリー・グリニッチ
Composes, Produces & Sings/Let It Be Written, Let It Be Sung

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エリー・グリニッチ追悼 その1 ロネッツ“ビー・マイ・ベイビー”(Be My Baby by the Ronettes)

2009-09-07

曲名
ビー・マイ・ベイビー(Be My Baby)
アーティスト
ロネッツ(The Ronettes)
収録アルバム
『ザ・ベスト・オヴ・ザ・ロネッツ』(The Best of the Ronettes)
作曲者
ジェフ・バリー、エリー・グリニッチ(Jeff Barry, Ellie Greenich)
リリース年
1963年
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これから数回にわたって、先日没したエリー・グリニッチの追悼をします。主として、彼女が書いた曲を取り上げることになりますが、彼女自身が歌ったものにもふれることになるでしょう。

本題に入る前に名前の読みの問題を片づけておきます。辞書には、Greenwichの読み方が3種出ています。天文台で有名なイギリスの町Greenwichは「グリニッジ」という、スペルから類推しにくい発音をしますが、これが人名に適用される場合もあるようです。

ウィキペディアのエリーのエントリーは、根拠は示さないまま、「グレニッチ」と発音するとしています。彼女自身がインタヴューなどで、そう発音すると語ったのかもしれません。

ほかに「グリニッチ」という読み方も存在します。わたし自身は「グレニッチ」がよいと思いますが、検索の便宜を考えて、比較的よく使われている「グリニッチ」をとることにしました。妥協の産物ですが、「ジャック・ニッチェ」のような、ありえない発音でもなければ、実体(正しくはジャック・ニーチー)とかけ離れているわけでもないので、「グリニッチ」を採用しても問題はなかろうと考えます。

なお、ときおり見かける「グリーンウィッチ」などのeeを伸ばす発音は、まずないと思って大丈夫です。固有名詞なので、うちの家系は昔から「グリーン」と伸ばすことになっている、という人がどこかにいる可能性は否定できませんが、無視してよい程度の確率でしょう。

☆ フィル・スペクター/ロネッツのオリジナル ☆


こんなことは書くまでもないことですが、やはり、エリー・グリニッチの代表作といえば「ビー・マイ・ベイビー」なので、無視するわけにもいかず、わたしもこの世評を追認する、ということだけ書いておきます。

ただし、極論するなら、この曲が好きというより、ロネッツのオリジナル・ヴァージョンで、フィル・スペクターがつくりあげたサウンドが好きなのであり、ハル・ブレインのドラミングを愛しているのですが。いや、曲が悪ければ、サウンドもドラミングも生きないのだから、「ビー・マイ・ベイビー」も出来のいい曲だといっても大丈夫でしょう。

The Best of the Ronettes
The Best of the Ronettes

☆ アンディー・キム ☆


フィル・スペクターの畢生のシングルであるロネッツのBe My Babyの前では、当然ながら、カヴァー・ヴァージョンはみな霞んでしまいます。唯一、カヴァーのなかでビルボードにチャートインしたのは、1970年のアンディー・キム盤です。個人的にはあまりいい出来とは思いませんが(アンディー・キムの歌やアレンジより、ドラムとベースのプレイが気に入らない)、チャート・ヒットであることは無視できません。

しかし、このヴァージョンがヒットした裏には、この前年、キムが同じくスペクター/ロネッツ/バリー=グリニッチのヒットである、「ベイビー・アイ・ラヴ・ユー」(Baby I Love You)をカヴァーして、トップテンに入るヒットになったという事実があります。

チャート・ポジションが示しているように、先に録音された「ベイビー・アイ・ラヴ・ユー」のほうが出来がよく、柳の下の二匹目のドジョウだった「ビー・マイ・ベイビー」の出来はよいとはいえず、前作のヒットの余勢を駆って(じっさい、アレンジはまったく同じ)、いわば「ついでにヒット」したにすぎません。

まあ、わたしはそのように感じますが、当時、このシングルを買った人たちもたくさんいたとビルボードが証言しているわけだから、ロネッツ以外のヴァージョンで、唯一トップ40に届いたものとして、「ついでに」聴いてみるのも一興かもしれません。

現在入手可能なアンディー・キムのベスト盤は2種類あるようです。

Baby I Love You: Greatest Hits
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上はスティードとキャピトルという2つのレーベルを横断するベスト盤です。アンディー・キムの曲としては、キャピトル時代の「ロック・ミー・ジェントリー」(Rock Me Gentry)のほうが、「ビー・マイ・ベイビー」よりずっと好きなので、わたしはこの盤の選曲のほうがいいと思います。

もうひとつは、スティード時代の2枚のLPを合わせたトゥーファーです。
Baby, I Love You/Andy Kim
Baby, I Love You/Andy Kim
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Andy Kim
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「ロック・ミー・ジェントリー」は別の盤でもっている、スティード時代のものをたくさん聴きたい、ということであれば、こちらのほうがいいでしょう。じつはわたしも、Rock Me Gentryは各種オムニバスで数種類もっているので、もう不要なんですが!

☆ サーチャーズ盤 ☆


サーチャーズも「ビー・マイ・ベイビー」をカヴァーしています。オリジナル曲というのがほとんどなく、他人の曲を自分たちのスタイルにうまく嵌めこむことで数々のヒットを生んだグループですが、「ビー・マイ・ベイビー」は料理しにくかったようで、これまた残念ながら、あまりいい出来とはいえません。原曲がどんなものだったか、完全に頭から消さないと、聴いていて落ち着かない気分になるでしょう。

したがって、ベスト盤に収録されることはめったになく、わが家にあるのは1965年のアルバム『テイク・ミー・フォー・ホワット・アイム・ワース』(Take Me For What I'm Worth)のストレート・リイシューに収録されたヴァージョンです。

テイク・ミー・フォー・ホワット・アイム・ウォース+17(紙)
ザ・サーチャーズ
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上記国内盤は28曲入り紙ジャケで、オリジナルの『テイク・ミー・フォー・ホワット・アイム・ワース』に大量のボーナスを加えたものです。

以下は輸入盤で、こちらは「テイク・ミー・フォー・ホワット・アイム・ワース」(worthはウォースではなく、ワースと発音する)オリジナル・モノにステレオ・ミックスを合わせ、そこにボーナス少々という編成です。
Take Me for What I'm Worth
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The Searchers
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この輸入盤は31曲入りで、国内盤とは選曲が異なります。

しかし、この値段だったら、いっそ3枚組ベスト盤のほうがいいような気もします。
The Definitive Pye Collection
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☆ エリー・グリニッチのセルフ・カヴァー ☆


最後に、後年、作者のエリー・グリニッジ自身がカヴァーしたヴァージョンもあります。たぶん、フィル・スペクターと同じ方向にいっては完敗するだけだと思ったのでしょう、なんとワルツ・タイムでやっています。スペクターが通った道は避けたい、というのはよくわかりますが、これはかなり力の抜けるアレンジです。

Composes, Produces & Sings/Let It Be Written, Let It Be Sung

Composes, Produces & Sings/Let It Be Written, Let It Be Sung

結局、とくにいいと思うカヴァーはなく、フィル・スペクターが完璧な仕事をしたことを確認するだけの聴きくらべでした。

テーマ : HYDE
ジャンル : 音楽

レス・ポール追悼、エリー・グリニッジ追悼、ラリー・ネクテル追悼記事の今後の予定

2009-08-29

こちらではレス・ポールの追悼、Songs for 4 Seasonsブログでは、ラリー・ネクテルの追悼という予定外の記事を書かねばならぬことになり、あちらでは小津安二郎の記事が宙に浮き、こちらではジェイムズ・ボンド・シリーズが途中になっています。

ここにさらに、エリー・グリニッジの訃報が重なったのだから、もうひとつブログをつくらないことには、同時に書くことはできません。そもそも、ブログはほかにもやっているし、ウェブの外でもやるべきことは山ほどあり、計画を立て、整理し、できないものはやらないことにしないと、どうにも立ちゆかないところまできてしまいました。

もともと、Songs for 4 Seasonsブログはもう新しい記事を書かず、音楽と映画はこちらに集約するつもりだったので、やはり、その方面はできるだけ当家で扱うことにします。したがって、何回に分割するかわかりませんが、エリー・グリニッジの追悼記事は、こちらに掲載することにします。Songs for 4 Seasonsブログからいらしているお客さんに申し上げますが、エリー・グリニッジの追悼記事はあちらには書きません。

これだけやるべきことが重なってはどうにもならないので、レス・ポール・シリーズは3回分ほどけずって、次回で終わりにする予定です。そして、そのつぎからはエリー・グリニッジ追悼記事をはじめます。ラリー・ネクテルの追悼記事を書く場所がないのですが、ラリーのことはSongs for 4 Seasonsブログでさんざん書いたので、それをもって弔辞と代えさせていただくことにします。

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